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憲法情報Now<憲法関連裁判情報>

 

都立板橋高校卒業式事件(威力業務妨害被告事件)―(2)

T・O記

 2005年5月30日、板橋高校事件(事件の概要については、板橋高校事件(1)をご覧下さい)の第3回公判が開かれました。この日も、傍聴券を求めて、大勢の支援者らが列を作りました。

 まず法廷に入る前に、男性は手荷物を全て預けさせられました。女性も、手荷物一つのみ持ち込みが認められました。さらに、金属探知機で全身をチェックされました。筆者は、刑事裁判の傍聴を何度かしてきましたが、手荷物の持ち込みが禁止され、金属探知機でチェックされたのは初めてでした。裁判傍聴は、憲法で明示的に認められた国民の権利ですから(憲法第82条参照)、こうした負担を課せられることに対しては、疑問なしとしません。手荷物持ち込みを制限する点について、裁判所は、被告人への危害を防ぐためだと説明しています。法廷内でも、廷吏が常時3人体制で警備をしていました。

 この日は、当時の指導主事で、事件の様子をICレコーダーに録音していた鯨岡広隆氏に対する証人尋問が行なわれました。なお、証人が入廷する前に、弁護側は、ICレコーダの「資料入手報告書」には、Aフォルダにしか音声はないと明記してあるにも関わらず、開示請求に検察が応じて弁護団が聞いたB,C両フォルダにも音声が入っていたことに関し、証拠の採否を決める前に、調書を出した加治司法警察員の証人調べすることを申請しました。弁護側は、ICレコーダーの録音内容について、手が加えられたのではないかと考えているそうです。

 さて、鯨岡氏に対する証人尋問ですが、検察側の主尋問で、鯨岡氏が板橋高校の卒業式に参加することになったのは、卒業式の2〜3日前という時期であり、しかも藤田氏が参加することもあって、「不測の事態」が予測されるから、という理由だったことが明らかにされました。また、ICレコーダーについては、鯨岡氏が個人で購入し、個人の判断で録音を行なっていたと証言しました。

 録音内容に手が加えられているのではないかという弁護団側からの疑問もあったため、検察側は、録音内容の確認のために、ICレコーダーの再生を求めました。これに対して弁護側は、内容・採取手続などに問題があるとして、異議を唱えました。検察側は、内容の改変があったというなら、ここで聞いて確かめればよいと反論しました。しかし、弁護側が、録音がなされていないはずのB,Cフォルダに録音がなされていたことについて、なぜ録音されているのか検証されていないこと、そうしたことから、Aフォルダの録音についても内容の信用性が疑われることなどを主張しました。録音内容を書面化したもの(ICレコーダー解析表)によって、その内容を確認することについては弁護側が受け入れたため、裁判所は、ICレコーダー解析表で内容を確認するとの判断をしました。

 検察側は、解析表に基づいて、その内容を確認していきました。鯨岡氏は、藤田氏の演説や、退席命令に対する抗議の声が、非常に大きかったということを強調しました。また、解析表の内容が正確かどうかについて、若干不安があり、正確を期すためには、録音を聞く方がよいと述べました。ICレコーダーを警察に提出したことについては、警察の事情聴取の際に、自ら申し出て提出したことを明らかにしました。さらに、B,Cフォルダについては、卒業式の5日後に録音したと述べました。

 続いて、弁護側から反対尋問がなされました。弁護側は、まず、ICレコーダーの録音手続について尋問しました。ここで明らかにされたのは、録音に際しては、板橋高校の校長や、教育庁には一切相談せず、個人の判断だけで行なったこと、録音した後も、上司に報告しなかったこと、です。弁護側は、なぜ上司や同僚に録音したことを報告しなかったのか尋ねました。検察側が異議を出しましたが、裁判官に棄却されました。鯨岡氏は、「個人的なものだったから」と答えました。

 また、卒業式における指導主事の職務についても尋問がなされました。鯨岡氏は、卒業式が適正に執り行われているかを確認することと、祝辞を述べることだと答えました。さらに、学校の管理についても、教育委員会の仕事であると答えたため、弁護側から、施設管理権は校長にあるのではないか、地方教育行政法19条3項には指導主事の職務が定めてあるが、施設管理については規定されていないと指摘され、「〔規定について〕知らなかった」と答えました。指導主事が、その職務を定めた法律の条文を知らないまま、適切に職務を遂行できるものなのでしょうか。

 さらに、卒業式の適正な執行の確認について、その内容は、国旗掲揚、国歌斉唱、教職員の席の位置などが、いわゆる10.23通達に従っているかどうかの確認である、と答えました。弁護側からは、生徒、保護者、来賓については、監視対象とはならないのではないかと尋ねられ、保護者・来賓については、所掌の範囲外だと答えました。

 この尋問における弁護側のねらいは、録音が不適法に採取されたということの立証にありました。弁護側と鯨岡氏のやりとりを聞く限り、録音は施設管理権を有する校長の許可を得ていませんし、また、指導主事の職務の範囲外である来賓の監視を行なっていたわけですから、弁護側のねらいはある程度達成されたように見えました。

 さらに、ICレコーダーに記録されている時間と、実際の時間とでは、ズレがあったのではないか、ということが問題となりました。鯨岡氏は、録音の最中に何度も「○時○分」と、自ら時間を吹き込んでいました。ところが、ICレコーダーの示している時間とズレがあったようなのです。傍聴席からは解析表が見えず、どの程度のズレなのかわかりませんでしたが、時間は「業務の妨害」にも関する重要な点であるため、弁護団も厳しく追及しました。裁判所も、なぜ実際の時間とICレコーダーの時間がずれているのか尋ねました。これに対して、鯨岡氏は、ICレコーダーの時間の設定などについて、ルーズだったから、と答えました。

 ここでの弁護団のねらいは、ICレコーダーの録音内容の信用性を争うことにありましたが、この目的も、ある程度達成されたように見えました。

 鯨岡氏に対する尋問は、この日で終わる予定でしたが、弁護側が準備した質問をすべて消化できなかったため、次回も続けて証人尋問を行なうことになりました。次回公判は、6月21日午前10時から、104号法廷で開かれます。この裁判については、引き続き、報告していきたいと思います。

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