法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です

法学館憲法研究所

Mail info@jicl.jp
 
今週の一言
憲法情報Now
 憲法をめぐる動向
 イベント情報
 憲法関連裁判情報
 シネマ・DE・憲法
 憲法関連書籍・論文
 ■今日は何の日?
憲法Voice
研究所・客員研究員紹介
中高生のための憲法教室

憲法文献データベース
日本国憲法全文
リンク集
 
事務局よりお知らせ
賛助会員案内
メールマガジン
ご意見フォーム
サイトマップ

憲法情報Now<憲法関連裁判情報>

 

薬害肝炎訴訟(9)

T・O記

2006年1月16日、薬害C型肝炎訴訟の第5次・第6次訴訟の口頭弁論が開かれ、原告や弁護士による意見陳述が行われました。

まず、原告番号27番で、実名を公表している久野郁子さんが意見陳述を行いました。久野さんは、歯科大学を卒業し、大学病院で歯科衛生士として勤務していました。その際、肝炎の感染予防の対応を教わりました。待合室では肝炎患者を別にし、接する時もマスク・手袋・ゴーグルという重装備だったそうで、まるで汚染されたものであるかのような扱いだったと言います。

しかし、久野さんは、1988年に第二子を出産した際、フィブリノゲンを投与され、C型肝炎ウィルスに感染しました。産後3週間目あたりから体調を崩し、尿の色の変化や黄だんが出たことから、肝炎だと認識しました。医療従事者だった久野さんは、肝炎への差別・偏見があることを知っていたため、肝炎であることを自分の中で否定していたそうです。

しかし、体調の悪さに耐え切れず、姉を頼って病院へ行きました。そして急性肝炎だと診断され、入院することになりました。1歳10ヶ月の長女と、1ヶ月の長男は、それぞれ姉と、夫の母に面倒を診てもらうことになり、家族はバラバラになってしまいました。3ヵ月後、退院し、家族で過ごせることになり、心から喜んだといいます。

しばらく体調がよく、子育ても一段落した4年後の1992年、久野さんは歯科医院に勤めることになりました。そこで検診を受けたところ、慢性肝炎であることがわかりました。就職することになった歯科医院に電話で肝炎のことを告げると、「えー、肝炎ってうつる病気でしょう。働かない方がいいのでは」と言われ、就職を辞退しました。しかし仕事をあきらめきれず、別の歯科医の面接を受けたところ、何も言っていないのに「あなたは肝炎ですよね」と言われたそうです。久野さんの肝炎のことが他の医療機関に漏れていたのです。しかしその後、理解ある歯科医のところに就職できたそうです。

その後、久野さんはインターフェロン治療を始めました。副作用で髪が抜け、うつ状態になったそうですが、夫や子どもたちに励まされ、治療を終えました。しかし、ウィルスは消えなかったそうです。また夫は、久野さんの治療のために転勤を断り続けていたそうです。

2005年、ついに久野さんの体からウィルスが消えました。そのことで、裁判に訴える勇気も出たといいます。夫の「今話さなくていいのか、話さなければもっとたくさんの方が亡くなってしまうのではないか。国はまだまだこの裁判を引き伸ばすだろう。たくさんの方が亡くなるのを待っているのか」という言葉を聞き、久野さんは、「夫も被害者だったのだ」と思い、裁判に訴える決意を固めました。

最後に久野さんは、裁判官に対し、被害者のみならず、肝炎患者全体が安心して治療を受けられる体制の道しるべとなる判断を望む、と訴えて意見陳述を終えました。

続いて、弓仲忠昭弁護士が意見陳述を行いました。弓仲弁護士は、まず、薬害肝炎の被害の甚大さが、久野さんら原告の意見陳述で明らかになったと指摘しました。そしてその責任は、国と製薬会社にあると主張しました。というのも、肝炎に感染する危険性の高いフィブリノゲン製剤などの薬剤について、企業はその有効性に関する臨床データを欠いたまま製造を行い、国は承認をしました。そして被害を拡大させたからです。

そして、同じ薬害C型肝炎訴訟で、2005年6月21日に大阪地裁で、同年8月30日には福岡地裁で、国と製薬会社の責任を認める原告勝訴判決が言い渡されています。両判決とも、一部について原告が敗訴していますが、弓仲弁護士は、こうした点に触れつつ、東京地裁での更なる前進を目指す決意であると力強く宣言しました。

最後に、弓仲弁護士は、全薬害肝炎被害者の救済につながる名判決を願うと述べ、意見陳述を終えました。

口頭弁論終了後、TKP霞ヶ関第二会議室で報告集会が開かれ、支援者や弁護士、そしてこの日意見陳述をした久野さんらが挨拶をしました。また、各地の訴訟の報告などもなされました。

本件の次回口頭弁論は5月15日午後1時半から開かれます。また、昨年8月1日に結審した第1次〜第4次訴訟の判決が、3月23日午後2時より103号法定で言い渡されます。判決前日の3月22日には、午後6時半から、豊島公会堂のみらい座いけぶくろで、「350万人のねがい」と題された判決前夜集会も予定されています。関心のある方は是非ご参加下さい。

<<(8)へ

 

 
[今週の一言][憲法情報Now][中高生のための憲法教室][憲法文献データベース][事務局からのお知らせ]
[トップページ]