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国籍確認訴訟(2) 〜再び国籍法に違憲判決!〜

T・O記

2006年3月29日、日本人男性とフィリピン人女性の間に生まれた子どもたち9名が、日本国籍の確認を求めていた裁判で、東京地裁は、国籍取得要件を定めていた国籍法第3条の規定を違憲とし、原告ら9名の日本国籍を認める判決を言い渡しました。以下、判決の内容を紹介したいと思います。

国籍法第3条1項は、準正(婚姻関係にない父母から生まれた子(準正子)が、嫡出子の身分を取得すること)による国籍の取得を定めています。しかし、これは、両親が結婚し、かつ認知を受けた場合に限られています。そのため、父の認知を受けたとしても、両親が結婚しておらず、母が日本人でなければ(非準正子)、子どもは日本国籍を取得することができません。

この制度の下で、婚姻関係にない日本人男性とフィリピン人女性の間に生まれ、父から認知を受けた子どもたちが、国籍法3条1項の要件を満たしていないとして日本国籍が認められなかったため、国籍法の規定が憲法14条に違反するとして、裁判に訴えていました。

東京地裁は、まず、国籍法について、被告国が、国籍の得喪については立法府に広汎な裁量が与えられると主張したことに対して、立法府に広汎な裁量が与えられているとしても、それは憲法の範囲内で認められるものにすぎず、不合理な差別であれば、憲法14条違反になるとしました。

続いて、国籍法の趣旨について、国籍法は国民感情から血統主義を採用し、男女平等の観点から父母両系主義を採用したとしました。国籍法第3条1項の規定については、父母両系主義をより拡充、徹底するためのものであるが、日本国民の実子であっても、日本国民である父親から認知を受けたにすぎない子の場合は、父親と生活の一体化を欠くことが通常であって、日本への帰属意識が強いとはいえない、という理由から設けられた規定だとしました。

そして、現行の国籍法第3条の下で、非嫡出子の国籍取得に生ずる区別を検討し、母が日本国民である場合や、父が日本国民で胎児認知を受けた場合は、その子は日本国籍を取得できるのに対し、父が日本国民で生後認知を受けた場合は、父母が婚姻するか、もしくは帰化によらなければ国籍を取得できないことを指摘しました。つまり、父が日本国民で、母が外国人である非嫡出子であって、かつ父母が婚姻していない場合に限って、父から生後認知を受けたとしても、出生または届出による国籍取得ができないことを確認しました。

その上で、生後認知を受けて、父母が婚姻した場合(準正子)には日本国籍が取得できるのに対し、同じく生後認知を受けても、父母が婚姻していない場合(非準正子)には日本国籍が取得できないことについて、つまり、父母の婚姻の有無に基づいて、届出による国籍取得の有無が異なる点は、「極めて大きな差が生じる」と指摘しました。

また、同じ非嫡出子であっても、胎児認知の場合は、出生により国籍が取得できるのに対し、生後認知の場合は届出をしても国籍取得ができないことは、子どもにとって「極めて大きな不利益」だとしました。

以上のことを踏まえたうえで、国籍の有無が基本的人権の保障に影響することや、民主主義社会における法の下の平等の重要性を考慮すれば、非準正子が国籍を取得できないことは、容易に許されないとしました。そして、父母が婚姻しているかどうかという、子ども自らの力ではどうしようもできない事実によって差をつけることには慎重であるべきだと述べました。

以上のことから、父が日本国民で、生後認知をした場合における国籍取得について、父母の婚姻を国籍取得の条件とする要件を設けたことを説明する合理的な理由がない限り、憲法14条1項に違反するとしました。

続いて裁判所は、父母の婚姻を要件としたことを説明する合理的な理由があるかどうかについて検討しました。

まず、被告国は、日本との帰属関係の点から、準正子と非準正子の区別が正当だと主張しました。この点について、準正子は非準正子よりも日本への帰属関係が強いといいうることを、裁判所は認めました。しかし、国籍法が父母両系主義に立っていることや、父の認知があるにもかかわらず国籍を取得できないことの不利益の大きさを考えると、親との家族関係や日本との帰属関係が、国籍取得のための重要な考慮要素であるとはいえないと判断しました。さらに、勤務の関係や不仲などのために別居している場合や、外国で出生した場合、必ずしも親との家族関係や日本との帰属関係が強いとは言えないにもかかわらず、準正子であれば国籍が取得できることも指摘し、そうした要素が、国籍取得の重要な要素ではないことも指摘しました。

被告国は、日本の伝統、社会事情、国民の意識などを考慮して、法律婚を尊重するという基本理念に基づき、嫡出子と非嫡出子を異なる取扱いをすることは、不合理ではないと主張したので(最高裁は、非嫡出子の遺産相続分が、嫡出子の二分の一であること(民法900条4号但し書き)を合憲としています)、裁判所は、この点についても検討をしました。そして、民法上の取扱いの差異と、国籍取得の有無は、問題を異にするものであって、国籍取得について、法律婚の尊重という観点から、合理的な説明をすることはできないとしました。

また、父母両系血統主義の拡充という観点から見て、法律婚の尊重は、国籍法の重要な原理ではないとしました。このことは、胎児認知をすれば、婚姻していなくても、国籍取得が可能であることからも、明らかだと指摘しています。さらに、父母の婚姻は、子どもにとって全く偶然の出来事であって、子どもの意思や努力ではどうにもなりません。また、認知については、訴訟によって、非嫡出子の側から求めることができますが(民法787条)、訴訟によって、父母の婚姻を求めることはできません。こうしたことから、婚姻という、子どもの力では決めることのできない事情によって、国籍取得の有無について区別をすることは正当化できないと判断しました。

このほか、被告国は、準正要件の基準としての客観性の確保や、偽装認知の防止、各国の法制度などを主張して、区別の合理性を主張しましたが、裁判所は、いずれも区別の合理的な理由とはならないとしました。

以上のことから、非準正子のこうむる非利益の大きさなども考慮に入れると、この区別は合理的な根拠に基づくものとは言えず、憲法14条1項に違反する不合理な差別である、と判断しました。

しかし、国籍法3条1項全体を違憲無効とすると、原告らの国籍を認める根拠となるべき法律がなくなってしまうこともあって、違憲とされる部分は、準正要件を定める部分のみであるとしました。

原告らが国籍法3条1項における届出をしたことも認めました。したがって、国籍法3条1項の要件を満たすとして、原告ら9名の子どもたちの日本国籍を認めました。

国籍法3条1項の規定が憲法に違反するという判決は、昨年も出されています(この判決については、国籍確認訴訟(1)をご覧ください)。昨年の判決は、国籍法3条1項の規定そのものの合憲性は認めましたが、父が母と内縁関係にあることを強調し、婚姻関係があるに等しい場合にまで国籍取得を認めないことは、憲法に反するとしたものです(これを専門用語で、「適用違憲」といいます。法律の規定そのものを違憲とするのではなく、この事件で適用することが違憲である、とすることです。したがって、別の場面での適用は合憲となる場合があります)。

しかし、今回言い渡された判決は、父と母が内縁関係にあるかどうかを問題とすることなく、国籍法3条1項そのものが憲法違反だとしました(これを専門用語で、「文面違憲」といいます。適用の仕方に関わらず、規定そのものが違憲だとすることです)。すなわち、本判決は、昨年の判決よりもさらに踏み込んだ判断を示したものであって、まさに原告らの全面勝訴といいうる画期的な判決でした。

この判決に対し、国は控訴しました。そのため、裁判は今後も続くことになります。

国籍法3条の規定については、2002年11月22日の最高裁判決において、3人の裁判官が、補足意見というかたちで、その合憲性、合理性に疑問を提起しています。判決の結論に影響がない部分なのですが、あえてこのような補足意見を述べたということは、最高裁の裁判官も、この規定が非常に不合理だと考えたからではないでしょうか。

子どもたちは日本で生まれ、日本語を母国語として使っており、本人の意識は日本人であるそうです。にもかかわらず、両親が結婚をしていないという、本人にはどうしようもない事情によって、日本国籍を認められなかったのです。場合によっては、国籍国へ強制送還されることもあります。これが子どもたちのためになることでしょうか。国は、一刻も早く国籍法3条を改正し、子どもたちが日本国籍を取得できるようにするべきだと思われます。

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