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憲法情報Now<憲法関連裁判情報>

 

在日コリアンをめぐる訴訟(2)
枝川ウリハッキョ訴訟2

T.O.記

 2004年12月16日、枝川ウリハッキョ訴訟の第5回弁論期日が開かれました。60席ほどの法廷は、被告側の支援者でほぼ埋まっていました。若い学生の姿も何人かありました。

 はじめに、2003年12月15日に提訴された最初の訴訟と、2004年7月29日に提訴された、隣地の返還および使用料支払請求訴訟とを併合する手続がとられました。後者の土地は、前者の訴訟が提起されたときは、区の管轄下にあったため、訴訟の対象とされなかったのですが、その後、管轄権が都に返還されたため、都があらためて訴訟の対象としたものです。

 続いて、被告である学校側が第三準備書面を提出・陳述しました。この準備書面で、学校側は、民族教育権に対する侵害を前面に打ち出しました。というのも、学校側は、現在も使用されている校舎を取り壊して土地の返還をするということを請求されているため、それに応じると、そもそも児童に対して教育ができなくなってしまうからです。これまで、憲法学界では、民族教育権については、集団を権利主体とすることに対する慎重な姿勢もあって、詳細な研究が行われてきたとは言い難い状況にあります。そのような状況において、学校側は、民族教育権の内容として、自由権的側面、すなわち国家によって民族教育を妨げられない権利と、社会権的側面、すなわち国家から助成を受ける権利があるとし、その根拠として、憲法26条、13条、14条を援用しました。そして、国際人権規約社会権規約27条や、子どもの人権条約28条などが、教育を受ける権利を保障し、自由権規約27条や子どもの権利条約29条・30条が少数民族の権利に言及していること、自由権規約委員会がこうした条項に民族教育権を読み込んでいることにも触れ、日本に対し、朝鮮学校などへの差別的取り扱いについての懸念を表明していることを指摘し、都による訴訟行為が、この民族教育権の自由権的側面を侵害すると主張しました。さらに、民族学校に対して助成がなされていないのは、民族教育権の社会権的側面を侵害するものであると主張しました。

 また、1972年の契約(これについては(1)をご覧下さい)の意思解釈について、美濃部都政が契約に至った経緯・趣旨を考慮すべきであるとして、都側に資料を探して提出するよう強く求めました。しかし都側は、30年も前のことのため、資料がなく、また契約に関わった人たちも退職してしまって、当時の状況は調べられないと答えました。これに対して被告学校側は、都側の態度は真剣に資料を探そうとしていないとして、「真摯な交渉を続けてきた」という主張は正当ではないと批判しました。あわせて、被告側で調査したところとして、美濃部都知事が、憲法を遵守すること、教育を受ける権利を保障するということを言明しており、そうした経緯・趣旨の調査は可能であることを指摘しました。

 さらに、被告側は、都が監査委員に提出した資料を裁判に提出するように求めましたが、都は、提出する意思がなく、どのような内容だったのかについても、主張・立証しないと応じました。

 裁判終了後に弁護士会館で行われた報告集会では、弁護団から、本日の訴訟について、改めて説明がありました。そのなかで、弁護団長である新美隆弁護士は、本件が「教育」というきわめて重要な権利が問題となっていること、また、在日コリアンが1945年の「解放」後に真っ先に手をつけたのが民族教育であり、彼らにとって民族教育がそれほどまでに重要なものであったことを強調しました。

 次回の弁論期日は、2005年2月18日午後1時半から、631号法廷です。興味のある方は、傍聴にいかれてみてください。

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