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難民訴訟(12) 難民申請者に生存権を!

ビルマ難民弁護団  弁護士 猿田佐世

1 Kさんの経歴
 ビルマ人のKさんは、ビルマの軍事政権に反対し民主化運動を続けてきました。Kさんはビルマの少数民族であるカレン民族ですが、「民主化活動に参加した」「カレン民族である」というだけで人々が強制労働にかり出され命を落とすような状況がビルマでは続いています。
 ビルマでは、1988年に軍事政権に反対して学生運動が盛り上がり、国民全体の運動となりましたが、その後、軍事政権がクーデターをおこない民主主義は完全に崩壊しました。現在に至るまで民主的な選挙は行われていません。民主化活動のシンボルでありノーベル平和賞受賞者であるアウンサンスーチー女史が軍事政府により長期間軟禁状態におかれてきたことはあまりにも有名です。
 Kさんはそんなビルマにおいて、学生たちとともに民主化活動を行ってきたため、軍事政府に拘束されそうになり、1992年、日本に逃げてきました。その後も、民主化活動を続け、日本では得意のギターを生かして反政府歌を演奏し、民主化のイベントをリードしてきました。

2 難民申請と収容 
 2002年Kさんは旅券不携帯で逮捕をされた後、難民申請を行いました。日本の難民認定制度は大変厳しく、Kさんも一次申請で難民と認められず、異議申し立ても認められず、現在は、東京地方裁判所で難民不認定処分を取消すよう裁判を行っています。
 日本では、難民申請が認められるのは、一年に10人程度です(2004年の認定件数は申請者426人のうち15人)。そして、難民申請者たちは、その間、入国管理局に収容されることが少なくありません。
 Kさんも、逮捕の後、1年6ヶ月近くにわたって入国管理局に収容されました。収容生活は、いつまで続くかわからない大変過酷なものであり、Kさんはノイローゼ状態となり、夜も眠れない状況で体重が6キロ減ってしまいました。
 2004年4月、Kさんは仮放免申請がやっと認められ釈放されましたが、しかし、Kさんの仮放免には就労してはならないという条件が付けられていたのです。
 Kさんは家族とも離れ単身日本に命からがら逃れて生活をしています。仕事をせずにどうやって生きていったらいいのでしょう。Kさんは、やっとの事で蕎麦屋の仕事を見つけ、生活しました。

3 就労禁止条件違反で再収容
 昨年12月、仕事をしていることを指摘され、Kさんは入国管理局に出頭を求められました。指摘を受けた後、Kさんはすぐに仕事をやめました。それまでも、その日暮しだったKさんの生活は日増しに困窮していきました。
 出頭を求められたKさんは、入国管理局での取り調べで、「どうして仕事を辞めたのですか」と聞かれ(!)、「あなた達が仕事をしてはいけないというからですよ!」「私はどうやって生きていったらいいのですか」と訴えました。入国管理局の職員は「私にもわかりません。お友達に助けてもらってください」と言ったそうです。一回目の出頭の日はKさんは無事家に帰ることができましたが、偶然その日、Kさんとともに入管に定期出頭していたビルマ難民申請者のWさんは、裁判が最高裁で継続中であるにもかかわらず、Kさんの目の前で収容されてしまいました。Kさんの目の前で、仲間たちが泣きながらWさんの肩をたたき、抱き合って励まし、元気でと別れを告げていましたが、Wさんは奥さんと引き離されて収容されてしまいました。
 収容生活が過酷であることは難民申請者誰もが知っています。Wさんの奥さんは、「これじゃ、日本の政府は、ビルマの軍事政権と変わらないよ」と泣きながら怒りを口にしていました。目の前でWさんが連れて行かれてしまう姿を見たKさんは、次は自分の番だとどれほどつらい思いをしていたか、想像に耐えません。
 この12月の取り調べの後、Kさんは、お金もなく食料を手に入れることができませんでした。カップラーメンやおかゆを10カップほど寄付してもらい、数千円の援助を受けて、なんとか年を越しました。
 そして、続く1月11日の定期出頭の日、終にKさんは、私たちの目の前で収容されてしまいました。入管の職員は、残酷です。弁護団もKさんの出頭に付き添い、仕事はしませんから収容だけはやめてくださいと申入れをしましたが聞き入れられませんでした。現在、Kさんは品川にある入国管理局に収容されています。

4 日本における難民制度の運用 〜生存権の確保を
 仕事をしてはいけない、それは、生きていくことができないことを意味します。カップラーメンの支援を10袋ばかり受けて、人はどのくらい生きていけるのでしょうか。
 日本は難民条約の加盟国であり、政治的意見や人種、宗教を理由に本国政府から迫害のおそれのある人を難民として認め、保護する義務を負っています。しかし、日本では、難民として認定されることがきわめて難しく、また難民申請をしてから結果が出るまでの期間が大変長くなっています。
 難民は、国で迫害を受け、迫害のおそれがあることから日本に命からがら逃げてきた者たちであり、すでに逃げてきたときから難民なのであって、日本政府に認められて初めて難民となる訳ではありません。難民申請者の生存権を保障することは難民条約締約国の義務であるといえます。
 この就労禁止の条件は、難民申請者の労働権ばかりか生存権をも奪い、日本国憲法、日本が批准をしている自由権規約、社会権規約にも反するものです。そして、難民を保護すべき難民条約に根本的に違反し、直ちに改められねばなりません。
 日本政府に対し、難民保護の真の意味を理解することを、そして広く真の難民を難民と認めること、難民申請者に対しその生存権の保証をすることを求め続けていきます。

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