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憲法情報Now<憲法関連裁判情報>

 

難民訴訟―(5) アフガニスタン難民不認定処分取消訴訟判決

I.M.記

 2004年2月26日に東京地裁で出された難民不認定処分取消訴訟の判決についてご紹介します。

 この裁判は、9.11直後の2001年10月に、難民申請中だったにもかかわらずアフガニスタン人(ハザラ族)が収容された事件のものです。裁判では、原告側は、難民不認定処分は、原告が難民に該当することを看過してされた処分であるから無効あるいは取り消されるべきであり、退去強制令書発付処分は、難民を迫害のおそれのある国に送還することを禁じた難民条約33条1項、入管法53条3項のノン・ルフールマン原則に違反し、取り消されるべきであると主張しました。被告側は、「就労目的の組織的不法入国事案」であったとして、偽装難民だと主張しました。

 判決は、原告が、シーア派ハザラ人であることを理由として、タリバンによって迫害を受けたとする供述は十分信用することができるし、そのことを前提とすると、通常人が原告の立場に置かれたとしても、本国に帰国すればいつ同様の事態に遭遇するかも知れないと考えるのが相当であるから、迫害の恐怖を抱くような客観的事情が存在すると認められるとし、原告が難民条約上の難民に該当するとしました。また、判決は続けて、「原告が難民条約上の難民であるにもかかわらず、この点を看過してされた本件不認定処分には、少なくとも重大な瑕疵があるというべきであり、難民認定処分が難民該当性を有する者に対してもたらす結果の重大性にかんがみれば、本件不認定処分は当然に無効なものであるというべきである」と判示しました。

 さらに、判決は、被告側が原告は迫害を受けた事実が存在しないにもかかわらず、日本での経済活動を目的として、難民であるかのごとく偽装して難民認定申請をしたと主張していた点については、難民申請をする際にその国で生活していく必要があることから、難民認定を受ける希望と就業の希望が併存するのは「人間の自然な感情である」とし、そのうえで、日本の現在の厳しい入国管理と難民認定に対する消極的な姿勢について、「これらのことをアフガニスタン人からみれば、我が国は以前からアフガニスタン人を保護しようという姿勢に欠けたばかりか、この時期はさらにその傾向を強めて入国すら拒否しようとしているものと理解できる」と述べました。

 現在、入国管理局は、「不法滞在等の外国人情報」を匿名でも受けつけるというサイトを開設し、「違反者と思われる人」の通報を奨励しています。しかし、こうした方法は、今回の判決とも難民条約の趣旨とも逆行するものだと解されます。国際的にみても、日本の難民保護に対する姿勢は極めて遅れています。今回の判決は、そうした姿勢に対する厳しい批判を含んでいた、その意味で「画期的」な判決だといえます。

(法学館LawJournal2004年4月1日配信号より転載)

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