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学生無年金訴訟

弁護士  山崎あづさ さん(福岡県弁護士会)

 現在、20歳以上の国民は、みんな国民年金制度に当然に加入し(強制加入)、65歳になった、障害を負ってしまった、生計を支える人が亡くなったという場合に、老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金を受給できることになっています。
 ところが、平成元年まで、学生は、20歳になっても当然加入とはならず、自分で「保険料を払って国民年金に加入する」という手続(任意加入)をした場合だけ、国民年金の被保険者となるという制度になっていました。
 その結果、20歳をこえた学生が任意加入の手続をしないうちに予期せぬ事故や病気で障害を負ってしまった場合、障害基礎年金を受給できないという事態が生じたのです。
 これが、学生無年金障害者の問題です。

 国民年金法は、老齢・障害・死亡といった国民誰もが直面する可能性がある出来事による所得の減少に対し、年金という形で国民すべてが保障を受けられるようにしようという理念に基づいて作られました。そのため、原則として全ての国民を制度に加入させ、収入のない人は保険料の免除を受けられるようにして、悪質な滞納者でないかぎり年金を受ける途を保障することにしました。そして、その後も改正を重ね、年金の保障を受けられる対象を広げていきました。また、20歳前の障害の場合には保険料を全く納めていなくても年金を支給するなど、民間の保険とは異なる所得保障制度としての役割も担ってきました。

 ところが、その中で、学生だけは、最後まで取り残されていたのです。学生は、収入がないから保険料を納められない等という理由から、昭和34年の立法で適用除外とされ、任意加入の手続きをしない限り完全に制度の枠外に置かれました。ところが、学生に用意された任意加入制度は、保険料免除がなく、保険料を全額納めなければならなかったため、学生には極めて加入しにくい制度でした。実際のところ、学生の約98%は任意加入していませんでした。
 このような制度のはざまで、年金を受けられない障害者が発生し、マスコミや国会でも問題になりましたが、平成元年改正で強制加入となるまで放置され、その後もそれまでに無年金障害者となった人に対する保障は一切なされませんでした。

 学生無年金障害者は、学生の年金について十分な保障をしていなかった制度の欠陥による被害者です。彼らは、学生の98%が任意加入していなかった状況のなか、みんなと同じような認識で過ごしていただけであり、怠慢で保険料を納付しなかったのとは根本的に違います。それが、20歳から大学卒業までの期間中に障害を負ったというだけで、一生涯障害年金を受けられないのです。働けない上に医療費もかかり、経済的な困窮は切実です。また、初めて障害の診察を受けたときに学生でなかった人や20歳未満であった人には、保険料を納めていなくても年金が支給されており、同じ障害者の間でもほんのわずかの違いで大きな不公平が生じています。

 学生無年金障害者らは、このような国民年金制度の欠陥が憲法14条および25条違反であるとして、2001年、年金不支給決定の取消しと国家賠償を求め、全国9カ所の地裁で提訴しました。
 2004年3月24日、全国の裁判の先頭を切って、東京地裁で判決が下されました。国が学生無年金の問題を是正する立法措置をとらずに放置したことは憲法14条に違反するとして、原告1人あたり500万円の国家賠償を認めるという、画期的なものです。この判決を受けて、学生無年金障害者問題の解決に向けた動きが加速しています。
 学生無年金障害者は、制度の狭間で生まれた少数の弱者です。このような人々を切り捨てるのではなくいかに救済できるか。社会保障の意義と司法の役割の真価が問われていると思います。

 
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