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『学校に言論の自由を』裁判(10)

2011年5月2日

以下、「土肥元校長の裁判を支援する会」のご了解を得て、そのブログに掲載された情報を転載します。(法学館憲法研究所事務局)

第10回口頭弁論 証人尋問の報告

3月24日証人尋問の報告 

増田証人・古川証人・田中証人・園田証人

●東京地方裁判所527号法廷 午前9時50分開廷

1. 増田氏(土肥先生の非常勤教員採用の面接を担当)に対する証人尋問

A.主尋問(被告代理人による尋問)に答えての増田証人(指導主事)の主張

・採用面接の概要  
非常勤教員採用の選考は、平成20年11月に教育庁の神楽坂庁舎で行われた。土肥先生の面接官は、増田氏と桧山課長の二名であった。面接時の机上の書類は、被面接者の一覧、申込書、推薦書兼業務評価書、評定票(白紙)であった。面接の実施方法については、選考課から説明があった。また、評定欄、評定項目についても説明があった。評定の項目は、職務遂行能力、積極性、勤勉性、健康状態の4項目であり、評定はABCの3段階である(Aは優れている、Bは普通、Cは劣っている、健康状態についてはAは良好、Bは普通、Cは劣る)。総合評定については、Cの場合には所見欄に所見を付すことになっていた。面接時間は、20分であった。

・採用面接での評価と質問の内容について
増田証人は、土肥先生のことは、神津高校の校長、三鷹高校の校長として知っており、また推薦書(推薦しないという内容)も読んでいたが、それらは面接の評価には影響を与えおらず、面接では、当日の受け答えのみから評価をした。面接での質問について、質問例が選考課によって示されてはいたが、それにとらわれる必要はないということであったので、もう一人の面接官と相談して質問内容を決めた。二人で分担し、一人が志望理由と職務に関する能力、知識を有しているかを質問し、増田証人は勤勉性を問う質問と、現職での職務の遂行状況についての質問をした。

・面接での土肥先生とのやりとり
非常勤教員を志望した理由と、「これまでの経験をどう生かすか」を問う質問に対しては、土肥先生は自分が教員になった経緯から話しを始め、教育相談に携わりたいという希望を述べられた。また、「初任者研修で初任者から先生の指導は間違っているといわれたら、どのように対処するのか」、という質問に対しては、土肥先生は、自分には35年間の経験があるということ、また、自分は、論理的にものを考える人間であることを述べ、初任者の主張が論理的に正しくなければこれを「論破する」と述べた。「教科指導ができるか」という質問に、自分の専門である社会のほかに、数学および小学校全科も教えられると答えた。都立高校改革について、それへの取り組みとその苦労について聞いたところ、土肥先生は、自分も都立高校の出身であり、私立校に行かなければ国立の大学に進学できないということではおかしいので、進学重点校の施策には異存はないが、三鷹高校の中高一貫校についての課題とチャレンジスクールについては持論を述べ、制度批判を一部含めた持論を展開しました。

・面接の評価とその理由について
被告代理人:職務遂行能力がC評価なのはなぜか。
増田証人:校長経験者であるのに、校長としての経験について述べないで、教員としての経験を生かして、と答えたこと、初任者研修に関する問いで「論破する」と答えたことから、Cとした。
―積極性についての評価は。
増田証人:教育相談に携わりたいという答えであったのでBとした。
―勤勉性についての評価は。
増田証人:都立学校改革の重要施策である学校経営の問題についての答え方から、Cにした。
―健康状態については
増田証人:最初は、少し痩せられたかなと思ってBにしたが、体力には自信があるとのことでAに修正した。
―総合評価と所見について
増田証人:総合評価はCとした。所見は、被面接者について特に記すべきことがあれば書くように、また総合評価をCにした場合には必ず書くようにとのことであったので、Cにした理由を記入した。どのような職を望むかと聞いたとき、校長経験者としての経験を生かすという発言がなかったこと、初任者を「論破する」と述べたこと、都立高校改革に関する質問に、正対せず、組織人としてのモラルに欠けていると判断したことが、その理由である。

B.反対尋問
(原告代理人の高橋弁護士、吉峯弁護士、そして最後には土肥先生ご自身による反対尋問が行われました。)

・増田証人と土肥先生とのかかわりについて
高橋弁護士:土肥先生が晴海総合高校教頭のとき、あるいは小山台高校定時制の教頭のときには、地区担当等での接点はあったのか。
増田証人:接点はなかった。
―初めて会ったのは?
増田証人:平成16年、神津高校の校長としての土肥先生と会った。
―何回くらい会ったのか。
増田証人:校長連絡会において、10回くらい。それ以外では、会ったことはない。
―当時は土肥校長についてどう思っていたのか。
増田証人:特に課題のある校長だとは思っていなかった。
―平成20年11月の面接の時には個別的職務命令の件は知っていたのか。
増田証人:三鷹高校定時制では個別的職務命令を発出しなくてもよいと言っているということは聞いていた。これについては、当時、全校長に個別的職務命令の発出をお願いしていたところであったので、「これは違うかな」と思っていた。

・ 面接時のことについて
―面接のときには、前述以外の書類を受取ったのか。
増田証人:受取っていない。
―推薦書に関して、「推薦しない」というものを他に見たことはあるか
増田証人:見たことはない。
―全部で何名が「推薦しない」とされていたのか、知っているのか。
増田証人:知らない。
―面接で、推薦書において「推薦しない」とされている人がA評価になることはありうつのか。
増田証人:ありうると思う。
―業績評価書を見てどう思ったか。
増田証人:書かれている事実のみを認識した。
―面接にマニュアルはあったのか。
増田証人:あった。タイトル、枚数は覚えていないが、そのペーパーは読んだ。選考課の説明と同じ内容が書かれたものであり、質問例は示されていたが、それにとらわれなくてもよいとのことだった。
―20分でいくつくらい質問できるのか。
増田証人:短く答える方であれば10問くらい。
―面接時、他に何グループいたのか。
増田証人:6つか7つ。
―被面接者の現在の職務における取り組みの状況についての質問は、だれが考えたのか。
増田証人:自分が考えた。
―被面接者との面接の前に、現在の職務における取り組みについて、わからない点が何かあったのか。
増田証人:その取り組みのすべてを把握しているわけではなかった。
―質問の内容について他のグループとのすり合わせは行ったのか。
増田証人:行っていない。評定項目を評定するにふさわしいものをということで考えた。
―同じような質問を、被面接者全員に対して行ったのか。
増田証人:基本的には同じだが、校長経験者でない人に対しては少し違う質問をした。
―「教科指導をしてください」と言われたらどうするのか、という質問に関して。
増田証人:教科指導は、非常勤教員の職務に含まれている。ただ、校長退職者が配属校で教科指導をする事例を直接に見たことはない。私が知っている限りでは、聞いたことはない。
・ 面接での増田証人と土肥先生のやり取りについて
―中高一貫校の課題の具体的な内容は聞いたのか。
増田証人:聞いていない。私が聞きたかったのは、自律的な学校経営の強化への取り組みであり、それを校長経験者である退職予定者には、答えていただいていた。
―学校経営の強化に関する質問は、非常勤教員のどのような適性を見るための質問なのか。
増田証人:校長経験者である非常勤教員として真摯に勤務できるのかを見るためである。
―校長退職予定者が、職務に真摯に取り組まないかもしれないという危惧は抱いていたのか。
増田証人:一般的に危惧は抱いていた。土肥先生に対しては、面接後、その危惧を抱いた。
吉峯弁護士:非常勤教員の職務の内容としてはどのようなものがあるのか。
増田証人:生徒に対する教育相談、生徒およびその保護者に対しての就学指導、新人の先生方あるいは課題のある先生方への研修指導、教科指導です。
―とすれば、これらの職務を遂行する能力があるかどうかが、いちばん重要なのではないか。
増田証人:そうです。
吉峯弁護士:それらの職務について、現場教員としての経験を生かすのは、重要なことではないのか。
増田証人:重要なこと。
―ではなぜ現場教員としての経験を生かそうとしているということが所見においてCの理由となるのか。
増田証人:校長経験者がその経験を生かそうとしているかどうかという点からは、マイナス評価となる。
―現場は重要ではないか。
増田証人:校長経験者に期待されていることは、それだけではない。校長としての経験を生かしていただきたい。教育相談においても、現場教員としての経験を生かすということだけを言ったのはふさわしくない。
―では校長としての経験を生かすとはどういうことか。
増田証人:管理職として指導してきた経験を生かした指導。
―教科指導をするうえで、例えば社会科でどう校長経験を生かすのか。
増田証人:それまでのすべての経験を生かすべき。
・ 面接当日以前の土肥先生への増田証人の評価と当日の評価の理由について
吉峯弁護士:土肥先生が神津高校の校長であったときに指導を担当していたのか。
増田証人:主に生徒に対する指導について、担当していた。当時の神津高校には生徒指導に関しては、課題はなかった。したがって、当時の神津高校の校長に生徒指導についての課題はなかったということになる。しかし、三鷹高校の校長としては、定時制での卒業式の個別的職務命令の発出に関して、課題があると見ていた。
―他にも課題があったか。
増田証人:私どもの所管事項については、卒業式の個別的職務命令の発出の件だけである。
―所管外では。
増田証人:職員会議での挙手採決の禁止に対し意見を言ったということを聞いていた。職務命令に違反して懲戒処分されたのではない、ということは認識していた。挙手採決の件は、担当部署が、課題であるといっている。個別的職務命令については発出したと理解しているが、命令書(文書)を発出しておらず、指導に従っていないというのが課題であると認識していた。そのほかには、人事考課制度についても意見を言っていると聞いていた。
―絶対評価とされているのだから相対評価をするのはおかしいと意見をいうのは、「課題」なのか。
増田証人:課題だと認識している、人事部が適切にやっていないといっている。
―面接にあたっては、予断も偏見も持たずに臨んだのか。
増田証人:はい。
―なぜ、面接官に推薦書・業績評価書を事前に読ませるのか。
増田証人:判断材料にするためかとおもうが、なぜ見せられたのかはわからない。自分としては、公正に臨もうとおもってやっている。
―(そのうえで)非常勤教員として、土肥先生は、不適切であると考えたのか。
増田証人:「論破する」という発想は、不適切。また、都立高校改革に関する質問に正対していないことも不適切。「論破する」ということについては、初任者の意見について(社会に公表して)社会が正しいと判断するのであればしかたないというような発想であり、受入れられない。
―質問に正対していないとは、どういうことか。
増田証人:都立高校政策のうちの、学校経営の強化の取り組みや、その苦労について聞いたのに進学重点校等の話、三鷹の中高一貫校について、それに関する委員会のなかで苦労しながらやってきたという話をしたということ。

・土肥先生からの反対尋問
土肥先生:私が、中高一貫検討委員会の報告書を作成したのは知っていましたか。
増田証人:知らない。
土肥先生:公民の免許しか持っていない私が数学を教えられるのですか。
増田証人:教えられない。

2. 古川氏(学務部担当課長)に対する証人尋問
(「職員の意向を確認する挙手・採決禁止」通知の撤回要求・要請書に対する平成20年8月19日の古川氏の電話での回答に関する問題)

A.主尋問に答えての、古川証人の主張

・平成20年8月13日の聴き取りについて
きっかけは、平成20年8月4日に、土肥先生から、都教委に、「職員の意向を確認する挙手・採決禁止」通知の撤回要求・要請書(回答期限8月20日)が提出されたことであった。それ以前にも、公開討論の要求はあった。これに対しては当時の担当から、土肥校長が述べているのは、組織内部の問題であり、当事者間でやりとりするべきことであること、都教委への文書による意見の提出は可能であることを伝えていた。8月4日に提出された要請書に確認すべき点があったため、平成20年8月13日に都庁で聴き取りを行った。他に3名が同席したが、主として古川証人が質問をした。説明が必要なことは、各担当者からも答えた。聴き取りの概要は、同席した係長が記録したとおりである。そのときの印象としては、推測や、他の教員からの伝聞が多いな、ということであった。これは、教員への影響について(意見を言っても無駄だという空気が広がっているという主張)と、教員の言論の自由がなくなると生徒の言論の自由もなくなるという主張の2点について受けた印象である。禁止の趣旨は、職員会議での適正な運営のために挙手・採決を禁止するということであり、企画調整会議で十分議論すべきところを、職員会議で諮るのは、不適切であるということであった。また土肥先生は企画調整会議に批判的であって、主幹、主任、といったヒエラルキーのもとでは、校長の息のかかった人たちの意見だけが聞き入れられることになるとしていた。しかし三鷹高校ではそうした実態はないとのことであった。要請書の内容について事実か、伝聞かを確認する必要があった。
被告代理人:三鷹高校における具体的事実を確認したのか。
古川証人:言論の自由がなくなると生徒の言論の自由がなくなるということは、言っていたが、事実としてそうしたことがあるという話しではなかった。

・ 平成20年8月19日の電話での古川証人の回答について
回答期限が20日であったので、が8月19日に、要請書への都教委の三部からの回答の内容をまとめて、古川証人が電話で土肥先生に連絡した。土肥先生は、回答期限の8月20日まで待つ、ということであった。8月21日に、土肥先生から連絡があり、支援者の方と話をし、公にするとのことであった。8月22日以降に、古川証人の伝えた回答の内容は、土肥先生のホームページ等に掲載され、公にされた。

・ 平成20年6月の都の調査について
6月ごろ、都立の校長・副校長に企画調整会議の運営や職員の言論の自由について、学校経営支援センターの支援チームが聴き取りで調査・把握した。調査結果は、平成20年11月に公表されたが、どの学校も通知以降、企画調整会議で議論は充分行われている、言論の自由への影響はない、との回答であった。言論の自由への影響があると回答した校長はいなかった。また、挙手・採決の禁止撤回に賛同している校長もいなかった。企画調整会議は、学校運営上、重要なものであり、これに否定的な校長はいないと考えている。

B.反対尋問

・公開討論を要求した理由について
高橋弁護士:土肥先生が公開討論を求めた理由については聞いていないか。
古川証人:公の場で議論をし、公の場で判断を仰ぎたいということ。
―それ以外では。
古川証人:公開の場での反応を知りたいということ。
―6月25日の土肥校長からの都教委への電話について知っているか。
古川証人:受けたのは自分ではないが、内容については聞いている。
―土肥先生が公開討論の必要性があるとしたのは、それが生徒の言論の自由にかかわる憲法問題であるからだということについては、聞いていないか。
古川証人:聞いていない。

・ 8月13日の聴き取りについて
―同席した4人全員が質問者だったのか
古川証人:現実には、主として古川が質問し、係長が記録をとった。他の人たちもメモはしていた。これらの記録は公文書かどうかわからないが内部のメモである。
―予め質問は作ってあったのか。
古川証人:作ってあり、机の上において質問した。質問は古川が作成し、皆に見せてあった。

・ 職員会議での意向を確認するための挙手と言論の自由について
禁止の通知の発出以前には、多くの都立高校で行われていたのか。
古川証人:昔は、90数パーセントの学校で行われていたが、平成18年度の始めには22校。
―22校のみであるのに、なぜ、全都立校に対して禁止の通知を出したのか。
古川証人:22校という数は看過できない数である。徹底する必要があった。
―(土肥先生からの聞き取りの際に)「組織の民主的運営とは何か」について土肥校長に問いただしているが、その意味は何か、それについて都教委は否定的なのか。
古川証人:民主的運営ということが多数決のことであれば、都教委としては否定的。
―聞き取りにおいて、「生徒の言論の自由とは何か」と土肥校長に確認しているが、その意味は。
古川証人:具体的な考えはないが、生徒の学校生活の中での言論の自由とは何かということ。
―言論の自由のない教員が教えれば、生徒の言論の自由がなくなる可能性が高い、ということのどこが疑問なのか
古川証人:言論の自由のない教員が教えるということと、生徒の言論の自由がなくなるという二つのことの因果関係がわからなかったということ。
―第二次世界大戦中の教員には言論の自由がなかったということについての認識はあるか。
古川証人:認識は特にない。

・ 土肥先生が法令を遵守しているということの確認
―支援団体の記者会見に同席した土肥校長の発言については知っていたか
古川証人:ホームページ、報道等で認識していた。
―土肥校長の「私の学校では挙手採決の禁止をちんと守っている、法令を遵守している」という発言内容は知っていたか。
古川証人:知らない。

・8月19日の電話での回答について
―古川証人が、電話で読み上げる形で指導したしたのは、土肥先生が公の場で発言する可能性もあると見てのことか。
古川証人:かなり個人的な見解、事実ではないことを、公の場で伝えることで、都民や、三鷹高校の生徒、保護者が誤った見解を持つのではないかという懸念を持って指導した。
―どうして読み上げるだけだったのか。なぜ文書でなく電話だったのか。
古川証人:校長先生に対して伝える内容であり、読み上げてメモを取っていただいた。
―文書によって回答していただけないのかと聞かれて拒否したことはないのか。
古川証人:読み上げたあとで文書で回答してくれと言われたが、拒否した。
―都立高校の管理運営事項について、権限と責任を持つ校長と都教委が、議論をする余地はなかったのか。
古川証人:ない。
―職員会議を主宰するのは校長だが。
古川証人:校長が職員会議の設置をするかどうかは任意である。
―設置権者、主宰者である校長が挙手採決について議論する余地はないのか。
古川証人:学校経営の健全化、適正化のための通知は、現場の実態にもとづいて発出している。

・ 守秘義務について
―指導を読み上げる際に、どの部分に守秘義務が課せられるかわかっていたか。
古川証人:当時の見解については、記憶していない。何が守るべき秘密に当るのかは、わからない。業績評価問題については関知していない。
―土肥元校長が、守秘義務違反の懲戒処分を受けていないことは知っているか。
古川証人、受けていないと思う。
吉峯弁護士:人事部の業績評価についての見解に関して、教育庁の中での認識の共有化や調整はないのか。
古川証人:これについてはない。
―評価を本人に開示するということには、基準の開示が含まれるのではないか。
古川証人:そのような扱いとしている。

・ 土肥先生の反対尋問
土肥先生:都立校の校長に、言論の自由に関するヒアリングをしたとき、三鷹高校はなぜ含まれなかったのか。
古川証人:すでに意見をお聞きしていたので。
土肥先生:三鷹高校も、都立高校のうちの一校です。言論の自由への影響があると答えた校長が、一人いたことになります。
土肥先生:事実はひとつなのだから、校長会での録音をしてくださいと古川証人に要請したのを、覚えていますか。
古川証人:覚えていません。
土肥先生:断られました。
                               
3. 田中氏(人事部職員課長)に対する証人尋問
(非常勤教員不合格問題  田中氏は選考の際、土肥元校長の推薦書作成にあたった。)

A.主尋問

・推薦書とは
被告代理人:採用選考推薦書(以下推薦書と略記)はどのような役割をもつか。作成にあたっての着眼点は何か。
田中証人:非常勤教員採用選考の際、審査の評価判断上の重要な要素である。作成にあたっての着眼点は、都教委の指示に従い、都教委の方針に従っているかということである。具体的項目としては「仕事の成果」「職務遂行能力」「組織支援力」「職務の理解・実践力」で、これらにもとづき「総合判定」を出す。
被告代理人:推薦書の作成手順は?
田中証人:教育職員課管理主事が原案を作り、上司の主任管理主事、副参事と私(課長)が検討する。
・土肥元校長の推薦書
被告代理人:土肥元校長について何か指示をしたか。
田中証人:土肥先生については慎重に調査してほしいと指示した。校長連絡会で、教員の業績評価を絶対評価にしてほしいと言っている校長がいると聞いていた。制度運用についての誤解と思ったので副参事によく説明するよう指示した。副参事からは説明したとの報告があった。その後教育指導課から「職員会議での挙手・採決の禁止」について異論を唱える校長がいるとも聞いた。それらを踏まえ、推薦書を作成した。

・各評価Cの理由
被告代理人:「職務遂行能力」がCの理由は?
田中証人:業績評価制度についての誤解がある。人事については慎重な制度運営を求めたのに配慮がなかった。
被告代理人:「組織支援力」もC。その理由は?
田中証人:担当所管が指導しているのにも拘らず、自分の主張を繰り返した。対外的意見表明が適切でない。
被告代理人:「仕事の成果」がCの理由は?
田中証人:上記と同様である。
被告代理人:「職務の理解・実践力」がCの理由は?
田中証人:非常勤教員として採用しても職務を忠実に遂行できないと判断した。
被告代理人:総合判定もCの理由は?
田中証人:職務に対する責任感と適切な遂行能力に欠けると判断した。校長経験者を非常勤として採用するということは、4月以降は後輩校長の部下となって職務遂行しなければならないが、自分の主張に強い拘りをもつ土肥元校長が配属された場合、現職校長がこうむる被害は学校運営の支障になると判断した。

B.反対尋問

・当該推薦書に関する確認事項
高橋弁護士:推薦書に推薦者の押印がないのはなぜか?
田中証人:教育長が一括して決裁するので個々には押印しない。
高橋弁護士:教育長に報告するのか?
田中証人:さだかではない。
高橋弁護士:検討を命じた主任管理主事の名前は?
田中証人:明官管理主事。
高橋弁護士:この年受験した校長退職者は何人?
田中証人:20人くらい。
高橋弁護士:土肥元校長には十分な調査をするよう指示したそうだが、同様な指示をした受験者は何人?
田中証人:3人か4人。
高橋弁護士:なぜ調査を指示したか。調査する必要のある土肥元校長の言動とは?
田中証人:全般的に把握した上で評価するため。
高橋弁護士:「職務遂行能力」を評価する際に、さきに挙げた理由のほかにどんな事実を把握していたか?「組織支援力」「仕事の成果」「職務の理解・実践力」については?
田中証人:すべて推薦書に書いた理由以外は把握していない。
高橋弁護士:「職務遂行能力」でCをつけられた者は何名か?またAは何名か?
田中証人:覚えていない。
・評価の根拠
高橋弁護士:A,Bの評価の根拠は?
田中証人:覚えていない。管理主事があげてきたものを見るだけ。
高橋証人:「職務遂行能力」の着眼点の各要素にウェイトをかけていたか?他の評価項目で各要素に優劣はあるか?
田中証人:特にウェイトや優劣はない。
高橋弁護士:校長の職務の中で、教員からの評価や、生徒たちがより満足を得られるように努力しているという要素は入っているか?
田中証人:校長の仕事にはいろいろあると思う。
高橋弁護士:上司からの指示で違法なものについては従う必要がないと思うか?
田中証人:(違法性が)明白な場合はそう思う。
高橋弁護士:「仕事の成果」がAの校長は何が優れているのか?
田中証人:個々についてはいろいろあると思う。
高橋弁護士:定時制課程の中退者の数の減少などは評価の対象になるのでは?
田中証人:そういうことはあまり考えなかった。
高橋弁護士:土肥元校長の「職務遂行能力」の判断の根拠は?
田中証人:こちら側からの慎重な対応要請に応えなかったことだ。
高橋弁護士:土肥元校長が懲戒処分を受けていないことは知っているか?
田中証人:知っている。

吉峯弁護士:三鷹高校で生徒、保護者たちが自主的に寄せた色紙を知っているか?
田中証人:著書で知っている。
吉峯弁護士:推薦書に何で書いていないのか?
田中証人:それが重要だとは思わなかった。
吉峯弁護士:土肥元校長の人事考課上の問題は?
田中証人:通知発出の経緯も何度も説明したが理解しない。事実と経緯とを区別していなかった。
吉峯弁護士:土肥元校長の一番問題な発言は?
田中証人:東京の学校から言論の自由がなくなっていると言っていること。
吉峯弁護士:意向を聞くための挙手・採決禁止を批判していることが問題ではないのか?
田中証人:それが問題なのではなく、もう少していねいに事実と経緯を区別して説明すべきだ。
吉峯弁護士:言い方の問題か?そのために不合格にされたというのに。
田中証人:業績評価についてはさまざまな説明をきちんと理解していれば、そのような発言にはならない。
吉峯弁護士:評価に当たって三鷹高校がどのように運営されているのかの調査はしたのか?土肥元校長が熱心に仕事をしたということが何故一言も書かれていないのか?
田中証人:業績評価と推薦書は別。調査は担当管理主事がしたはず。

・ 土肥先生の反対尋問
土肥元校長:私の教育実践について調査しましたか?推薦書の評価に当たって三鷹での教育実践は一行も書いていませんね。

4. 園田氏(人事部選考課長)に対する証人尋問
(非常勤教員不合格問題 ― 選考の結果、土肥元校長を不合格判定にした。)

A.主尋問

・非常勤教員選考について
被告代理人:非常勤教員制度の概要と非常勤教員の選考基準について説明をもとむ。
園田証人:従来再雇用制度と再任用制度があったが、平成19年度からの大量退職者に備えて検討し、平成20年度より非常勤教員制度を実施した。再雇用は定員内で非常勤は定員外である。選考基準は、採用選考申込書、採用選考推薦書兼業績評価書の審査結果および面接評価である。これらに下位評価がある場合や懲戒処分がある場合には個別に判断する。なお19年度との違いは推薦書の中に「推薦の有無」の項目をもうけたことである。
被告代理人:土肥元校長はなぜ個別評価の対象となったか?
園田証人:3つの点で個別評価となった。@面接委員2人による下位評価 A推薦書の総合判定がC B「推薦の有無」で無にチェックがあった。以上のことから選考課として不合格判定を下した。(人事部長決裁)

B.反対尋問

・選考の際の考慮点
高橋弁護士:各評定ともオールCの教員は他にいたか?
園田証人:いなかった。
高橋弁護士:推薦が「無」の人は何人だったか?
園田証人:数はよく覚えていないが19年度は2名、20年度は土肥先生を含め3名程度。
高橋弁護士:校長職で不合格になったのは?
園田証人:2〜3名いたと思う。
高橋弁護士:過去2年の業績評価については?
園田証人:不合格の理由にはならなかった。
高橋弁護士:生徒や保護者からの評価は選考に含まれないのか?
園田証人:含まれていない。
高橋弁護士:土肥元校長の業績について一番詳しいのは誰か?
園田証人:中部学校経営支援センター(以下センターと略す)だ。
高橋弁護士:選考の前に土肥校長についての情報はあったか?それはどのような情報か?
園田証人:あった。TV報道などを通じて知っていた。センターからではない。
高橋弁護士:合否判定に入ってセンターからの情報はあったか?
園田証人:なかった。
高橋弁護士:面接の場で、面接委員の質問に土肥校長が正対した答をしなかったのか?
園田証人:中高一貫校にするに当たっての苦労を聞いたにも拘わらず、中高一貫の制度批判のみを論じていた。
高橋弁護士:生徒や保護者からの評価については考慮したか?選考は多様な観点からなるべく偏らないよう考慮して評価判定をするのではないのか?
園田証人:考慮していない。

・土肥元校長の不適格性
吉峯弁護士:土肥先生は処分歴なし、過去業績問題なし、欠格事項なし。面接するのなら
予断を与える推薦書を面接委員にあらかじめ見せる必要はないのではないか?
園田証人:限られた時間内に効率的に行うため、参考として見せる。
吉峯弁護士:退職校長には教育相談、就学指導、研修指導の3つの職務を期待するはずで、
面接でなぜ主要でない教科指導について聞いたのか?
園田証人:面接委員の自主判断なので必要ないとは思えない。
吉峯弁護士:短時間の面接で、さんざんな推薦書をもとにしてオールCという全く無能力者だという烙印を押すのはおかしいと思わないか?
園田証人:非常勤教員としては不適格だと判断した。
吉峯弁護士:今、土肥先生は都内の二大学の講師として活躍しているが、どう考えるか?
園田証人:東京都の非常勤教員としては不適格なので、他分野での活躍とは矛盾しない。
吉峯弁護士:土肥元校長は職務命令違反をしたか?
園田証人:しなかったが、現職の公立校校長として指導に従わず、理解不足だった。それは問題だ。
吉峯弁護士:要するに「絶対評価なのにCD評価を2割以上つけろという相対評価を強要された」と言ったことが問題なのか?
園田証人:研修を受ける立場からは「強要」と受けとめるべきではない。数値は一定の目安を示すもので、評価の役に立つ。
吉峯弁護士:行政職でCD評価は何%か?
園田証人:職場によって違うが数%〜2桁の場合もある。
吉峯弁護士:なぜ校長連絡会でわざわざ2〜3割というのか?議論にわたるようなことを根拠に不合格につながる評価をつけるのはおかしいのではないか?
園田証人:それだけでなく通知問題など総合的に勘案しての判定結果である。

・裁判長より
青野裁判長:合格者の人数枠はあったのか?
園田証人:枠はない。
青野裁判長:合格者が余るような場合はあるか?
園田証人:もし全員が合格すれば、雇用はできる。
青野裁判長:下位評価などで引っかかる場合は個別判断というが、マイナス面だけでなく他のプラス要因も加味される選考方法なのか?
園田証人:制度としてはプラスも加味される。

*傍聴人のメモによるもので、必ずしも正確な内容ではない可能性もあります。

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