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『学校に言論の自由を』裁判(13)

2011年9月26日

以下、「土肥元校長の裁判を支援する会」のご了解を得て、そのブログに掲載された情報を転載します。(法学館憲法研究所事務局)

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結審 判決は12月22日!

★第13回最終口頭弁論報告
(2011年8月25日10時より、東京地裁527法廷にて)

 今回の口頭弁論では、これまでの青野裁判長に代わって8月1日付で着任された古久保裁判長のもとで、土肥先生が、新たに準備された「最終口頭弁論 意見陳述書」をもとに、三鷹高校の卒業生とその保護者からの色紙をも示しながら、最終意見陳述を行いました。
 そのあと、原告代理人の吉峯弁護士が、「ひとこと」ということで、意見を述べられました。吉峯弁護士は、毎回、傍聴席が満員になるほど注目されている、教育の問題に関する重要な裁判であることを新しい裁判長に対して訴えられました。また、特に、土肥先生がオールC評価によって、非常勤教員不採用となった点を強調され、土肥先生は、吉峯弁護士から見ても際立って優秀で、人格的にも素晴らしい方であり、また生徒からもらった色紙等が示すように教育実践において優れ、現在も複数の大学で非常勤講師として活躍している方であるにもかかわらず、教育現場での実践によってではなく、都教委の誤った指示に対して反対意見を表明したがゆえにオールC評価になり、非常勤教員採用試験に不合格となったことの不公正さを訴え、公正な判断をお願いしたい、と締めくくられました。被告代理人の弁護士からの意見陳述はありませんでした。

 裁判長より、判決は、12月22日(木)午後1時半に、527法廷で申し渡されることが伝えられ、結審となりました。
 今回も、傍聴の定員42名を超える、50名ほどの方が支援の傍聴にお越しくださいました。

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★最終口頭弁論 意見陳述 土肥信雄

1 私は大学卒業後総合商社に勤めていましたが、そこで行われていた独占禁止法違反である談合(闇カルテル)の事実を知り、利潤のためなら法をも犯す企業の体質を許せませんでした。だからこそ、嘘をつく必要がなく、しかも子どもが大好きだった私は教員になったのです。日本国憲法の精神に基づいた平和な日本を永続させるため、将来を担う子どもたちに対する教育活動に全力を尽くしました。
 教員生活最後の三鷹高校で、卒業生から卒業証書をもらい、さらに卒業生全員と保護者から心のこもった言葉の書かれた色紙をもらいました。34年間の教育活動を高く評価してもらったことは、私の誇りでもあり、教員に転職して本当に良かったと思っています。

 教育基本法第一条には「教育は人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者の育成を期す」と明記されています。民主的国家の前提は、全ての人達の「言論の自由」の保障です。その「言論の自由」が教育現場でなくなる危険性があったからこそ東京都教育委員会(都教委)を提訴したのです。教育の世界で「言論の自由」だけは、子どもたちのためにも絶対に譲ることが出来なかったのです。
 私が非常勤教員不合格になった時、私は都教委を提訴しようと思いました。なぜなら、教育の主体である生徒や保護者から高く評価されているにもかかわらず、都教委に対して意見表明をしただけで私を不合格にしたのは、まさに私に対する言論弾圧にほかなりません。また都教委に対して意見表明をした教員は排除されるという見せしめを、教員に示すことにより教員の「言論の自由」を奪おうとしたことも許せなかったのです。
 しかも私は何一つ悪いことはしていません。民主主義の原則に従って、法令を守りながら、都教委が間違っていることを、指摘しただけです。

2 校長連絡会で都教委から「文化祭で一都民から生徒の掲示物で偏った考え方の掲示物があるとの指摘があった。そのような掲示物については十分注意して指導するように」との発言がありました。私は即座に「しかし生徒の表現したことを事前に調べて撤去させれば,検閲にあたるので裁判になる可能性があります。裁判になったときに,勝てるのですか?都教委は私たち校長を支援してくれるのですか?」と質問したのです。意見が分かれる問題(今回の掲示物は沖縄戦)について校長の判断で生徒の掲示物を撤去することは検閲の禁止に違反して生徒に対する言論弾圧になる恐れがあり、裁判もありうると思ったからです。この考え方は間違っているのでしょうか。

3 2006年4月の「職員会議で教職員の意向を聞く挙手・採決の禁止」通知の撤回を求めたのは、すでに1998年7月に職員会議を補助機関化して最終決定者は校長であることを決めているため、教職員の意向と違う決定を校長が行っても何の問題もないからです。また、東京都立学校の管理運営に関する規則、第12条の7第1項には「校長は、校務運営上必要と認めるときは、校長がつかさどる校務を補助させるため、職員会議を置くことができる。」同第4項には「職員会議の組織及び運営について必要な事項は、校長が定める。」と明記されています。職員会議における挙手・採決等の方法は、職員会議の運営に関する事項であり、校長が定めるべき事項で、明らかに都教委は校長の裁量権を侵害しているのです。しかも法令遵守が私の信条であり、三鷹高校では通知どおり意向を聞く挙手・採決は行いませんでした。

4 民主主義国家である日本において米長氏を批判してはいけないのでしょうか?天皇が米長氏に対して、国旗・国歌問題で強制はしないでくださいと発言したにもかかわらず、強制をますます強めたので私は米長氏を批判したのです。そのために都教委に3回も呼び出しを受け、校長の上司である米長教育委員に対して今後このような発言をしないよう指導されました。最後には米長氏が三鷹高校に視察に行くとまで脅迫され、都教委は明らかに私の言論の自由を侵害したのです。そして2回目に呼び出した証拠として都教委が提出した指導メモの日時を偽造したことと、米長氏が三鷹高校に視察に行くという指導を都教委はしていないという二つの嘘は絶対に許すことができません。

5 東京都立学校教職員の業績評価実施要領には、「第一次評価者は校長で、絶対評価で行う」と明記されています。ところが都教委はC・D評価(悪い評価)を20%以上付けなさいと指導したのです。これは絶対評価ですか?明らかに相対評価です。私は都教委が20%以上というのであれば、実施要領を改定して相対評価にしてほしいと解決案まで提示したにもかかわらず、無視されました。都教委こそが実施要領違反、即ち法令違反をしているのであり、悪いのは都教委です。

6 卒業式等における教職員の職務命令については校長の権限と責任で出すように都教委から指導されました。したがって私は、私の権限と責任で口頭による包括的職務命令は出しました。さらに都教委は文書による個別的職務命令も校長の権限と責任で出すよう強く指導したのです。校長の権限と責任で出すということは、校長が出す、出さないの決定権を持っていますので、私の権限と責任で文書による個別的職務命令は出さなかったのです。このことに何か問題があるのでしょうか?しかも私が個別的職務命令を出していないのに、「土肥校長は個別的職務命令を出した」と嘘の報告を校長協会に対して行ったのであり、私の名誉を著しく傷つけたのです。

7 定時制・通信制指導体験発表会の発表者が、都教委と考え方が違うからといって交代させられました。私は発表会を主宰する定時制通信制教育研究会の会長をやっていましたので、都教委から発表者交代の打診がありました。すでに発表原稿が提出されていたため、断ったにもかかわらず、都教委は交代させました。裁判の中で都教委は「この発表会は若手の発表会であり、発表者が年配だったので交代させた」と主張しました。この理由は嘘です。私は3年半会長をして、4回研究発表会を見ていますが、どの年も50歳代の教員がいたことをこの目で見ています。実際交代させられた時の発表会にも50歳代が1人、40歳代が3人いました。この人達を若手というのでしょうか?また発表会の実施要項等には「若手の発表会である」という表現はどこにも書かれていません。

8 非常勤教員不合格については、明らかに私を排除するための恣意的な「非常勤教員採用選考推薦書兼業績評価書」(業績評価書)であり「面接」だったのです。
教育の主体である卒業生全員と多くの保護者から色紙をもらった私の評価がなぜオール「C」なのでしょうか?しかも都教委側の証人である当時の人事部選考課長の園田氏はオール「C」は私一人であったと証言しました。ということは非常勤教員採用試験を受験した790人中790番目の最低の成績です。この成績で合格になるわけがありません。私を排除するための恣意的な評価としか言いようがありません。

 業績評価はその人の教育実践について評価すべきであって、その人の発言等について評価することは思想信条及び表現の自由を侵すことになるので評価すべきでないことは明らかです。ところが都教委側の証人である当時の人事部職員課長の田中氏は、私の三鷹高校での教育実践を全く評価しなかったと明言したのです。評価の対象は全て都教委に対する私の意見表明だけであり、そのため最低の評価になったのです。三鷹高校での、補習体制を組織し、中途退学者を減少させ、体罰の禁止を教員に指導した私の教育実践は、都教委の方針通りであるにもかかわらず、全くそれが評価されないのは明らかに適正評価義務違反だと思います。

 非常勤教員採用選考の面接について、都教委側の証人である面接官の一人である増田氏は証人尋問で嘘の証言をしました。
 私に対して「非常勤教員として所属長(校長)から、教科指導をしてくださいと言われたらどうしますか」ともう一人の面接官が質問したと証言したのです。
 面接中にこの質問はありませんでした。なぜなら校長退職者は一般的には教科指導を行わないと私は認識していたからです。「私の知見したところでは、(校長退職者が教科指導を行っているという例は)ないことですね。」と面接官である増田氏ですら証言し、前述した園田氏も「教科指導はメインではない」、田中氏も「校長先生はあまり教科指導はやられない」と証言しているのです。

 もしそのような質問をされたら、私は「喜んで政治経済を教えます」と答えるはずです。生徒に教えることは大好きで、小山台高校定時制の教頭の時も授業を持ってました。ところが私は「私は専門の社会、それ以外の数学、小学校についても指導します」とまったく質問に正対せず、訳のわからない回答をしていたというのです。
 教科指導で私が教えることが出来るのは免許を持っている公民(政治経済と倫理)だけであり、数学は教えられません。ましてや小学校という言葉が出てくること自体がおかしいのです。この回答は「あなたは初任者の指導ができますか」と質問された時、「私の専門は社会だが、数学も中学の免許を持っているので理科系の指導もできるし、小学校の経験も生かせるので初任者の指導はできます」と答えた回答なのです。したがって私が質問に正対せず、能力のない校長ということを示すため、質問と回答を都教委が捏造したのです。

9 以上のように今回の裁判では多くの論争点があります。残念ながらそのすべての論争点で私の主張と都教委の主張は全く違っています。
 事実は一つであり、どちらかが明らかに嘘をついているのです。今までの私の主張と都教委の主張を比較検討し、また私のために書いてくれた、生徒、保護者、同僚、教員の約130通の陳述書と、学識経験者3名の鑑定意見書を参考にして、どちらの主張が正しいのか、公正な判断をしていただければと思います。

2011年(平成23年)8月25日 
原告 元東京都立三鷹高等学校 校長 土肥信雄

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裁判報告集会

 裁判終了後、引き続き、弁護士会館で報告集会が行われました。
土肥先生の挨拶のあと、高橋弁護士より、今回は、裁判官の交代があり、新しい裁判長になったため、土肥先生の意見陳述は、事案の内容に踏み込んだものとしたこと、8月1日付で着任した古久保裁判長については、どういった判決を書いている方なのか、まだ把握できていないこと、事前に裁判所に問い合わせたが、新たな立証等の指示はなかったこと、2年前の6月の提訴から2年半で判決というのは、事案の複雑さやボリュームからすれば、スピーディに進んだと言えること、こちらとしては、十分な立証をしてきたので、あとは結果を待つだけである、という解説をいただきました。

 なお、吉峯弁護士の5分間の意見陳述は、高橋弁護士も前もって聞いていなかった、アドリブでの意見表明であったことも明かされました。ついで、田口弁護士からは、12月22日に判決とのことであるが、さらに延期されて、年明けにずれ込む可能性もゼロではない、との指摘がありました。
 土肥先生からは、前回(7月7日)の意見陳述は、理念的なものにしたが、今回は、裁判長の交代を考慮して、具体的な内容のものとしたこと、オールC評価だけは納得できないが、そうした情報を都教委のほうが出してきたのは珍しいことであり、ある意味ラッキーとも言えるとの報告がなされました。

 参加者からの質問および発言の時間には、教員の業績評価が教育委員会や校長にとって都合の悪い教員をパージするために利用されている現状であることなどが話題となり、土肥先生の裁判と似た事例として、世田谷区の大嶽先生の業績評価に関する裁判があることが紹介されました。また、北海道、徳島、静岡から応援の傍聴に駆けつけて下った参加者の方々のご発言もあり、土肥先生支援の輪が全国に広がりつつあることを実感することのできた報告集会でした。

 

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