法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です

法学館憲法研究所

Mail info@jicl.jp
 
今週の一言
憲法情報Now
 憲法をめぐる動向
 イベント情報
 憲法関連裁判情報
 シネマ・DE・憲法
 憲法関連書籍・論文
 ■今日は何の日?
憲法Voice
研究所・客員研究員紹介
中高生のための憲法教室

憲法文献データベース
日本国憲法全文
リンク集
 
事務局よりお知らせ
賛助会員案内
メールマガジン
ご意見フォーム
サイトマップ

憲法情報Now<憲法関連裁判情報>

 

『学校に言論の自由を』裁判(5)

2010年3月22日

以下、「土肥元校長の裁判を支援する会」のご了解を得て、そのブログに掲載された情報を転載します。(法学館憲法研究所事務局)

第5回口頭弁論の報告

 3月11日(木)午前10時より第5回口頭弁論が東京地裁606号法廷で行われました。
 傍聴席は、今日も満員。土肥元校長の教え子の姿もありました。
 
 当日の審理は
 ・原告(土肥)準備書面2の提出
 ・西原博史早稲田大学教授の鑑定意見書の提出
 ・木ノ切弁護士より「原告準備書面2」についての説明
          (特に西原教授の鑑定意見を中心に)
 
 
 土肥先生は意見陳述を希望しましたが、今回は認められませんでした。
 口頭弁論は約15分程で終了。
 次回口頭弁論は5月27日(木)午前10時より606号法廷。

 (注:西原教授「鑑定意見書」へのリンク先は本記事の最下段にあります)
   
>報告集会(於弁護士会館5階)==

1.吉峯弁護士の報告と解説
 「西原教授の鑑定意見書は水準の高い素晴らしいものだ。教育委員会、校長、現場の各立場の 権限が、子どもの教育権の観点からどうとらえられるかを提起した。各権限の関係について先例的な意義がある。裁判所側も関心を示して積極的な対応をしてくれている。浪本先生、尾木先生の鑑定意見書も次回提出の予定。」

2.高橋弁護士の解説 
 「原告準備書面2は2つの部分から成っている。 
T都教委側の準備書面に対する反論
Tの反論では、原告側は新たな主張はない。都教委が消滅事項だと言っているのは時効権の乱用である。

Uの西原鑑定意見書では次の2つの論点を述べている。
 論点1.土肥先生の表現の自由への侵害
 職員会議での挙手・採決禁止への反対は「公的表現行為」である。教職員の業務評価への問題提起(守秘義務違反とされたが)や批判も「公的表現行為」である。
 
 論点2.校長としての独立した職務権限への侵害
 校長は教育と教育行政の二元性がある。教育行政権限のみ持っている都教委が教育についてまで権限を行使しようとしている。

3.木ノ切弁護士の解説 

 都側の準備書面は今までの繰り返し。都側の主張する「企画調整会議」の位置づけは机上の空論である。原告側は形骸化の事実を示していく。
 高橋史朗氏の引用も言葉尻だけを都合よく取り出している。現実がわかっていない。

4.土肥元校長

 都教委に「ウソをつくな」と言いたい。例えば「米長が三鷹へ来る」という3回目の指導はなかったとウソを言う。事実にもとづいて議論をしたい。
 都教委は職員会議を伝達の場にとどめようとしているが、職員会議は教員との最大のコミュニケーションの場だ。全く現実を知らない。
 具体的根拠を欠いているのは都教委の方だ。
   
>質疑応答(抜粋)
Q1:都立の教員で今年定年だが再雇用試験で不合格になった。組合でも取り組まない。業績評価はデタラメだ。そのことで苦情申し立てを3回行ったが全く意味がない。
吉峯:身分に関する差別が一番悪質な差別だ。都高教が取り上げないのは疑問。
土肥:苦情処理の行き先は学校経営センターで、行政の身内同士。第三者機関ではない。まともに審査するはずがない。

Q2:たとえ職員会議がなくとも企画調整会議がきちんと機能すればいいということにならないか?
土肥・吉峯:それでも職員会議は必要。トップダウンとボトムアップの両方が機能しなければ。

Q3:裁判に勝つには、はば広い支援が必要だが、この支援運動の反応は?
土肥:講演するたびに、どんどん支援者が増えている。特に東京の実態は全国に波及するので、非常に関心が高い。岩波ブックレットも昨年のブックレットの中でベストセラー(第7位)になった。

Q4:保護者と教師が子どものいのちを守る活動をしている。最近仲間の教師がどんどん飛ばされている。たった2年で異動とか。都教委の人事権乱用に対して、できることはないか?
吉峯:都知事を代えることですね。

Q5:この裁判で裁判所は憲法判断に踏み込もうとしているか?
吉峯:こちらとしては憲法にもっていきたい。鑑定意見書提出を受け付けるということは、裁判所側でも憲法判断を選択肢としてもっているということではないか。

                               以上 

                           報告会参加は約50人

西原博史教授「鑑定意見書」


第5回口頭弁論 「私の思い」

 3月11日の第5回口頭弁論で、土肥先生は意見陳述を希望しましたが、裁判官は認めませんでした。ただし裁判の節目、節目で意見陳述の機会をもうけるとのことです。以下に当日、土肥先生が予定していた陳述内容を掲載いたします。

 第2次世界大戦の大きな過ちを犯した日本は、その反省のもと、日本国憲法の前文に「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し」と不戦の誓いを述べ、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義を三原則としたのです。
 戦前においても、多くの人が戦争に反対だったと思います。しかし何故第2次世界大戦を止められなかったのでしょうか。それは言論の自由がなかったからです。私が大学生の頃、母に「どうして戦争反対と言わなかったのか」と詰問したことがあります。母の答えは「信雄、言いたくてもいえない状況だったのよ。多くの人は戦争反対だったと思うけど、もしそれを言ったら命がなくなるのよ」でした。戦前においては治安維持法により、言論弾圧が行われ、死を覚悟して戦争反対をいわなければならない状況だったと思います。戦争反対を言うことは非常に勇気のいることであり、それを言えなかったことについて私も理解しました。
 言論の自由が保障されていれば、戦争は起こらなかった可能性が強く、日本の歴史は大きく変わっていたと思います。
 そして戦後多くの人が「あの時戦争反対といっていれば」と後悔したのも事実だと思います。それ故に、私は憲法の三原則の中の基本的人権の一つである言論の自由の保障がとても重要であると思っています。
 その言論の自由が、教育の現場でなくなる可能性があるからこそ東京都教育委員会(都教委)を訴えたのです。しかも現在は戦前と違って言論の自由は保障されているはずですから、命を賭ける必要はありません。私の場合でも職を賭けたのであり、命の重さに比べれば、比べ物になりません。「あの時、都教委を訴えておけば」という後悔だけはしたくなかったのです。
 現職中に都教委に何度も公開討論を要求しました。どちらが正しいか、都民、国民の皆さんに判断していただきたかったのです。しかし残念なこと都教委は公開討論に応じてくれませんでした。やむを得ず裁判に訴え、口頭弁論という公の場で公開討論をしているのです。
 私も、都教委も子どものために全力をつくしています。したがってお互いにそれぞれの主張を出し合って、判断してもらえば良いのです。
 しかし、都教委の反論(準備書面)を見ると、事実と違うことが書かれています。お互いが主張するにも、その前提は「事実」から出発すると言うことです。「事実は一つ」であり、その事実にもとづいて主張すべきではないでしょうか。
 一例を挙げます。私は密告により間違いなく3回指導を受けました。3回目の指導では参事の新井氏が「教育委員の米長氏が近々に三鷹高校を訪問します。」と私に伝えたのです。それが都教委の反論では、指導は2回だけで、3回目の「米長氏が行く」指導は記録になかったとなっています。絶対に許せません。何故3回指導を行ったと言わないのですか。「かくかくしかじかの理由で米長氏が三鷹高校に行って土肥を指導するのです」と、正々堂々と言ってください。私はその時「是非来て下さい」と答えました。なぜなら私は、私の教育実践に自信を持っていたので、米長氏に是非私の教育実践を見ていただきたかったのです。教育の現場においては子ども達に「嘘をつくな」と教えています。「嘘つき」は教育関係の仕事に携わってはいけないのです。
 事実は一つです。都教委も事実に基づいた主張をして下さい。私の願いは、ただその一点です。

2010年(平成22年)3月11日     土肥 信雄


<<(4)へ

 

 
[今週の一言][憲法情報Now][中高生のための憲法教室][憲法文献データベース][事務局からのお知らせ]
[トップページ]