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憲法情報Now<憲法関連裁判情報>

 

戦後補償裁判――(13)強制連行訴訟広島高裁判決


I.M.記

 2004年7月9日、広島高裁で中国人5人を原告(控訴人)とする強制連行・強制労働裁判について判決が出されました。判決は、被告(被控訴人)である西松建設に対して、原告一人あたり550万円を支払うことを命じました。一審判決を覆す、逆転判決でした。一連の強制連行訴訟において、高裁段階で原告側が勝訴したのは、本件が初めてです。ちなみに、本件では、国を被告とせず、企業のみを被告とした訴訟でした。敗訴した西松建設は、直ちに上告しました。

 判決は、原告が強制連行・強制労働された被害者であることを認めたうえで、西松建設が、中国の青島で中国人労働者の引渡しを受けた後、不衛生な状態で食事も十分に支給せずに危険な重労働に従事させたことを認定しました。そして、こうした行為が、不法行為や安全配慮義務違反にあたると判断しました。あわせて、判決は、戦後補償の問題は条約で解決済みという主張に対して、個人の賠償請求権を国家は放棄することができないと明快に否定しました。

 しかし、判決は不法行為責任については、一審同様、除斥期間の規定により20年以上経過していることから消滅していると判示しました。ただし、安全配慮義務違反については、強制連行・強制労働が重大な人権侵害であり、また西松建設の態度が結果的に訴訟提起を遅らせることになったことなどから誠実な態度だったとはいえないとして、西松建設が時効の主張をするのは権利の濫用で許されないと結論づけました。

 この間、強制連行訴訟では、2001年の強制連行一次訴訟(劉連仁訴訟)一審判決、2002年の強制連行福岡訴訟一審判決、2004年の強制連行新潟訴訟判決と、毎年のように原告の被害を認定し、国ないし企業の賠償責任を認める判決が出されています。今年にかぎっていえば、すでに3月の新潟判決に続き、原告勝訴判決は2例目となります。

 ところで、第二次世界大戦の際の同盟国であったドイツは、この間、すでに強制労働に対する反省を内外に示すとともに、2000年には「記憶・責任・未来」基金を設立させ、国と企業が折半する形で出資し、被害者に対する賠償に着手しています。来年2005年は、戦後60年の年になります。すでに多くの原告も高齢化しています。国としても、こうした訴訟の経過を見守るという姿勢をいつまでも続けるのではなく、被害者が生きているうちに一刻も早く謝罪と賠償を行う方向に政策を切り替えるべきなのではないでしょうか。将来の東アジアとの関係を考えていくうえでも、歴史認識と戦後補償の問題は、いまなお根底に横たわっている問題でしょう。こうした問題を、「過去の清算」としてだけではなく、「未来志向」のものとして取り組んでいく姿勢が求められているように思われます。

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