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憲法情報Now<憲法関連裁判情報>

 

戦後補償裁判――(15)戦後補償裁判の最近の動向

I.M.記

 今回は、最近の戦後補償裁判の動向をいくつかご紹介します。

 まず、戦後補償裁判7でも紹介した「強制連行新潟訴訟」についてです。一審での原告勝訴判決を受けて、被告側の国と企業(「リンコーコーポレーション」、旧「新潟港運」)が控訴していましたが、控訴審での審理が10月20日に始まりました。控訴審は、東京高裁に係属しています。

 10月20日の第1回期日には、原告の安登山さん(82歳)が来日し、陳述しました。安さんは、1944年に中国から新潟に連行され、新潟港で石炭を運ぶなどの労働に従事させられたことを述べ、日本人の監督に毎日のように殴られ、頭にはそのときの傷がまだ残っていると証言しました。安さんは、裁判官に対し、「この傷をよく見てください」と涙ながらに訴えていました。この訴訟では、今後、さらに双方の主張などが本格的に論じられることになります。争点としては、不法行為や安全配慮義務、除斥などが中心的なものです。
 
 次は、「劉連仁訴訟」(強制連行一次訴訟)です。この訴訟は、1944年に北海道へ強制連行された劉連仁さんが、過酷な労働に従事させられ、生命の危機を感じ炭鉱から逃げ出し、戦争が終わったことも知らないまま保護されるまでの13年間山中で暮らしていたことについて、国の保護義務違反などを争っている事案です。2001年7月に出された一審判決(東京地裁)では、国は劉連仁さんの存在を把握してことからしても、その所在を探し保護する責任を負っていたとして、戦後の部分については国の責任を認めていました。しかし、劉連仁さん自身は、判決言渡しの直前に亡くなられてしまいました。現在は、遺族が遺志を引きついで裁判を続けています。
 その後、本件については控訴審での審理が続けられていましたが、10月26日、東京高裁での審理が結審しました。10月26日の法廷では、体調のために来日できなかった劉連仁さんの妻である趙玉蘭さん(82歳)の証言がビデオで流されました。ビデオのなかで、趙さんは、「自分ひとりで息子を扶養することは本当に辛いことだった」と話し、「他に辛いことは?」と弁護士から問われると、「いいたくない。あまりにも多いから」と涙をぬぐっていました。
 また、この日の法廷では、原告側が、早期の全面解決を実現して欲しいとして和解勧告を裁判所に求めました。原告側は、一審判決を越えた勝訴判決を前提に、@一審で認定された事実を認めたうえでの謝罪、A解決金、B歴史の教訓を伝える劉連仁記念館への支援の3点を求めたうえで、日本政府に対して、「真の日中友好と恒久平和を確立することが、政府の追求すべき公益である」とし、政治的解決を要請しました。あわせて、裁判所に対しては、判決を出す際には、「正義と公正を貫いた判決」をと求めました。判決言渡し期日は、追って指定されることになっています。

 最後は、この間、数回にわたって紹介してきている「遺棄毒ガス・砲弾訴訟」についてです。この裁判も、現在、東京高裁に一次訴訟・二次訴訟とも係属していますが、11月2日(火)の午後3時から、東京高裁808号法廷で次回期日が行われます。この日は、旧日本軍の元兵士の方が、上官の命令に基づいて毒ガスを遺棄したことを証言するという原告側の主尋問が予定されています。
 遺棄毒ガス問題については、遺棄した当事者がその事実を証言する機会はなかなかありません。また、当事者が高齢化するなかでは、その意味でも当日の証言は大変貴重な機会となります。関心のある方は、ぜひ当日裁判所に傍聴に行かれてみてはどうでしょう?

 今回は、最近の戦後補償裁判の動向について、いくつかの事案についてまとめてご紹介しました。このコーナーでは、引き続き、裁判の概要や論点、当事者の想いなどを中心に、いろいろな観点から戦後補償の問題を考えていきたいと思います。

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