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憲法情報Now<憲法関連裁判情報>

 

新宿区ホームレス生活保護裁判 〜 反貧困への闘い

弁護士吉田悌一郎

渋谷共同法律事務所ニュース(2009年1月1日 No.63)に掲載されたものを同事務所のご了解を得て紹介します。
(法学館憲法研究所事務局)

私が子どもの頃、日本ではどんなに貧乏しても飢え死にすることはないから大丈夫と言われていた。しかし、現在は、我が国の労働者の約3分の1である1736万人が、派遣やパートなどの非正規・不安定雇用となっており、その結果、年収200万円以下の給与所得者が1000万人以上もいるという状態で、もはや貧困の広がりは誰の目にも明らかとなっている。その上、最後のセイフティーネットといわれる生活保護も、今や機能不全に陥っている。生活保護の窓口の現場では、様々な難癖をつけて生活保護申請者を追い返す「水際作戦」や、生活保護受給者に対して半ば強引に辞退届を提出させる「硫黄島作戦」と呼ばれる違法行為が横行している。一昨年7月に起こった北九州市の餓死事件の被害者も、こうした違法な生活保護行政の犠牲者である。ついに、日本は餓死者を出す国になってしまったのである。
本件は、東京都新宿区においてホームレス状態にあったY氏が、アパートでの生活を求めて生活保護申請をしたところ、新宿区福祉事務所の職員は、東京都及び特別区が設置・運営する自立支援センターの利用を執拗かつ強引に勧め、Y氏がそれに応じないと、今度は「稼働能力を活用していない」として同氏の生活保護申請を却下した。そこで、Y氏は、昨年7月7日、新宿区を相手に、生活保護申請却下処分の取り消し、生活保護開始決定の義務付けを求める行政訴訟を提起した(東京地方裁判所民事第2部)。弁護団・支援者の間では、本件訴訟を提訴日にちなんで「新宿七夕訴訟」とも呼んでいる。
生活保護法においては、居宅保護が原則であって、アパートなどの居宅において保護が開始されなければならず、施設などでの保護はあくまで例外的であって、当然意思に反して施設などで保護することは許されない。また、「稼働能力の活用」は生活保護法上の受給要件ではあるが、稼働能力は、あくまで具体的に稼働能力を活用する場があってはじめて活用しうるのであり、住居のないホームレス状態の人々にとっては、そのままでは就職活動もままならず、現実的には稼働能力の活用の場はないに等しい。
しかし、現在、新宿区の福祉事務所と同様に、いわゆるホームレス状態にある人が生活保護申請のために福祉事務所の窓口を訪れても「生活保護ではなく、自立支援センター等に行きなさい」等と言い、生活保護を利用させないという運用をしている福祉事務所が少なからず存在する。しかし、こうした運用は明らかに違法である。
本件訴訟は、こうした違法な生活保護行政をたたき直し、同時に我が国の深刻な貧困問題を世に問う訴訟である。貧困問題に対する司法の見識が問われているといっても過言ではない。
我々弁護団としては、憲法第25条の「健康で文化的な最低限度の生活」の保障を実質化させ、貧困社会を打破するために全力で闘わなければならない。皆様には是非本件訴訟へのご支援をよろしくお願いします。

 
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