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憲法関連論文・書籍情報
特集I『共生をめざして―民族差別をゆるさない』
特集II『国旗国歌強制の是正を求めるILO・ユネスコ勧告をどう生かすか』
M.T

特集I
 2018年10月の韓国大法院「徴用工判決」以来、日韓の関係は過去最悪とも言われる程までに悪化しています。こうした政治的状況に伴い、日本国内においてヘイトスピーチやヘイトデモに象徴される在日外国人に対する民族差別的運動が展開されています。世界レベルで幾度も対峙し、乗り越えてきたはずの「人種差別」という問題が、日本において再熱化しているのです。
 こうした日本社会の「嫌韓」の空気を人権上・政治上看過できるものではないとし、「国内でどのような民族差別問題が生じているかを正確に認識するとともに、この事態に警鐘を鳴らす」(「特集にあたって」参照)という思いで、本特集は組まれています。民族差別への対抗言説を形成し、共生社会を目指すにあたり、問題の正確な把握は大前提の事柄です。本特集では、在日コリアンの方々が置かれる人権に関する実際的な状況(および日本における国家権力の「応答」の内容)や主要な論点が整理され、具体的な政治的・法的実践、そしてその課題と展望などが丁寧かつ多面的に紹介、分析されています。なお、本特集の最後には、今年の6月に素案が発表され、さらに11月これを修正したものが公表された川崎市の「川崎市差別のない人権尊重の町づくり」に関する論考も掲載されています。ヘイトスピーチに関する最新の動向をフォローしたものとして注目されます。

特集II 
 「国旗国歌法」制定から今年で20年を迎えました。本法制定後の2003年10月には、都内の公立学校において式典行事で全教職員に「日の丸・君が代」の起立斉唱を義務付ける所謂「10・23通達」が発せられました。爾来、これに従わなかった教員に対する戒告処分が後を絶たず、憲法上の権利として保障されている内心の自由・思想良心の自由の観点から看過しえない深刻な問題が生じています。この問題は度々法廷に持ち込まれましたが、最高裁においてこうした強制や処分を違憲・違法と判断された例はなく、多くの教員が司法上の救済を得られていないのが現状です。
 こうした国内的状況の中、今年2019年春、ILOおよびユネスコの合同委員会(CEART=セアート)から日本政府に対し、「国旗国歌強制の是正を求める」勧告がなされました。国際人権保障の観点から日本における「国旗国歌強制」への具体的な勧告がなされたのは初めてのことです。
 CEARTの正式名称は「教員に関する勧告の適用に関する共同専門家委員」で、1967年に設置されました。各国政府、教員団体、雇用者団体、国際機構等からの報告を基に世界の教師の地位を監視することを任務としています(本特集、勝野論文を参照)。日本国内を見回すと、教師が専門職として保障されるべき地位や権利が実現されていない事例が散見されます。本特集を通じ、日本の教員団体とCEARTによる協議を経て、主として「勧告」という形で日本の閉塞した状況を克服するための試みがなされていることがよくわかります。
 本特集の各論考によりCEARTの役割と意義、そして今回の「国旗国歌強制」に関する勧告の内容、および今後の展望等を学ぶことができ、日本の教育委員会の在り方や政府の対応がいかに世界基準から外れているかを知ることができます。今後、教員が抱える問題に対して新たなアプローチを模索するにあたり、CEARTの取組みやこの度の「勧告」は真剣に受け止めなければならないものと言えるでしょう。

構成は以下の通りです。

特集I『共生をめざして―民族差別を許さない』
◆特集にあたって………編集委員会・澤藤統一郎
◆いま、在日コリアンの人権状況は………金 竜介
◆高校無償化の朝鮮高校除外 最高裁判決と今後の課題………丹羽 徹
◆「関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典」の今日的意義と追悼の辞送付を拒否する小池都知事に見る問題………宮川泰彦
◆川崎の差別禁止条例案―その立法事実と条例制定の経過………宋 惠 燕

特集II『国旗国歌強制の是正を求めるILO・ユネスコ勧告をどう生かすか』
◆特集にあたって………編集委員会・澤藤統一郎
◆ILO・ユネスコ「教員の地位に関する勧告」の意義とCEARTの役割………勝野正章
◆初めての「国旗・国歌強制」是正 セアート勧告の内容と意義………寺中 誠
◆国際人権法をいかに活用するか―CEART勧告とNGOの課題………前田 朗
◆ILO・ユネスコからの勧告をどう活かしていくか………渡辺厚子

【書籍情報】日本民主法律家協会が発行する雑誌『法と民主主義』2019年10月号の特集。定価は1000円+税。


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