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浦部法穂の憲法時評

 

政治と金


浦部法穂・法学館憲法研究所顧問
2009年4月6日

 民主党・小沢代表の公設秘書が政治資金規正法違反で逮捕され起訴された事件が、さまざまな議論を巻き起こしている。小沢代表の政治資金管理団体「陸山会」の会計責任者である当の公設秘書が、西松建設の2つのダミー政治団体からの献金を西松建設から出た違法な献金であると知りながら、そのまま2つの政治団体からの献金として政治資金報告書に記載したため、これが政治資金規正法25条の虚偽記載にあたる、として逮捕・起訴されたものである。総額は3億円にのぼるとの報道もなされているが、立件されたのは03年から06年までの期間の計3500万円であった。
 政治資金規正法は、企業や団体による献金を、政党及びその政治資金団体に対するものを除き、禁止している(21条)。したがって、政治家個人の政治資金管理団体への企業・団体献金は認められていない。ただし、政治団体による献金は、この例外として認められている。また、企業・団体献金については、その規模(企業の場合は資本金の額、労働組合等の場合は構成員数など)に応じ、年間に寄付できる金額の総額の上限が定められている(西松建設の場合は、4500万円が年間献金可能額の上限となるようである)が、これも政治団体による献金については限度なしとされている。そのため、企業や団体が政治団体を作ってそこを迂回させれば、政治家個人への献金も可能となるし、総量規制を超える献金も可能となる、という仕組みになっているわけである。要するに、法律じたいが「抜け道」を用意しているのである。
 西松建設からの小沢氏側への献金は、この「抜け道」を利用したものである。つまり、表向きの寄付者はあくまでも2つの政治団体であった。それをそのまま政治資金報告書に記載したことが、虚偽記載として罪に問われたのである。本当は西松建設から出たお金だということを知っていながら西松建設からの寄付と記載しなかったことが虚偽記載だ、というわけである。だから、ここでは、当の公設秘書が西松建設から出たお金だと知っていたかどうかが、この罪の成否を決めるポイントとなる。しかし、企業や団体が政治団体を作るのは、まさに政治献金の「抜け道」としてであり、その政治団体からの献金が実際には背後にいる企業や団体からの献金にほかならないことは、暗黙にせよ、誰もがわかっていることだとさえいえる。その意味で、「知らなかった」という言い訳は、少なくとも「世間」に通用するものではない。
 しかし、その一方、こうした抜け道を利用した献金は、西松建設や小沢氏側だけでなく、もっと広く一般的に行われているものだということも、「世間」では疑われていない。そのため、今回の小沢氏公設秘書の逮捕・起訴について、憶測も含めて、さまざまな議論が飛び交うこととなっているのである。とくに、半年以内には必ず衆議院総選挙があり「政権交代」の可能性も現実的なものとして予想されているという状況のもとで、野党第1党の党首が「狙いうち」にされたことに、「政治的意図」を嗅ぎ取る議論は、決して少なくない。民主党にダメージを与えて政権交代を阻もうとする現政権の「国策捜査」だという「直球」勝負から、裁判員制度の見直しや捜査の全面可視化を掲げる民主党政権の誕生を嫌った検察上層の意向によるものだという「変化球」まで、この捜査・逮捕を疑問視する見解は、いわば「ウラ情報」的に、さまざまにいわれている。
 他方、とくに新聞やテレビでは、起訴された公設秘書が容疑を認める供述をしているとか、同時に起訴された西松建設の前社長が、小沢氏の地元の岩手県で西松建設が大型の公共工事を受注できたのは献金の効果だったと供述しているなど、献金の「わいろ」性を匂わせるような報道もなされている。こうした「オモテ情報」をみるかぎりは、逮捕・起訴も当然であり小沢氏は民主党代表を辞任すべきだ、という議論に与したくなる。ただ、これらの「オモテ情報」は、そのほとんどが「関係者の話でわかった」などというかたちで報道されているものであり、その内容からして、「関係者」とは捜査に携わっている検察内部の人間であることが明らかなものである。つまり、これらの情報は、ほとんどが、検察の「リーク情報」なのである。だから、これも、「ウラ情報」的にいえば、検察は新聞やテレビにわざと情報を漏らして逮捕・起訴を正当だと思わせるような世論操作を行っている、ということになる。
 私は、おそらく、「オモテ」も「ウラ」もどちらも、真相の一端を示しているのであろうと思う。ともあれ、この事件は、多くの人々に、検察というものが、まかり間違えば政治的弾圧の手段にもなりうるものであって、決して「正義の味方」などではないこと、そして、新聞やテレビの報道だけでは本当のことはわからないこと、を気づかせたという意味において、有意義な事件だったといえそうである。もちろん、問題の根本は、「政治と金」であり、「抜け道」だらけの法律のほうにある。ただ、そうはいっても、法律を作るのが献金をうける側の国会議員なのだから、「抜け道」のない法律を期待するほうが無理な話でもある。企業・団体献金の全面禁止という主張もあり、それが正しい政治献金のあり方の主張だとしても、全面禁止にしたところで、たとえば会社が社員個人の名前を借りて献金するなどの「抜け道」は必ず出てくる。自分自身への見返りを期待するのでなく、真に公共的な利益のために寄付をするということが、普通のこととして行われる社会にならなければ、「政治と金」の問題はいつもいつも「汚い問題」でありつづけるしかないのであろうか。

 

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