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浦部法穂の憲法時評

 

2010年


浦部法穂・法学館憲法研究所顧問
2010年1月7日

 謹賀新年
 新しい年の幕開けにあたり、この1年が、去年よりも少しは「まし」な、みんなが希望を持てるような1年であることを願いたいと思う。

 2010年という年は、憲法の観点から見たとき、どんな年になるであろうか。なによりも、経済を立て直して雇用不安・生活不安を解消することができるかどうかが、一つの大きな鍵となろう。昨年の「政権交代」によって登場した鳩山政権が、そのための政策を実行できるであろうか。新年早々こんなことを言いたくはないが、2010年度予算案を見るかぎり、残念ながら期待薄といわざるを得ない。2010年度予算案は、一般会計総額92.3兆円と過去最大規模にふくらんだ。子ども手当、高校無償化、農家戸別補償など、民主党の目玉政策が盛り込まれた結果でもある。しかし、これをまかなうため、国債発行額は44.2兆円と、当初では過去最大規模となり、いわゆる「埋蔵金」も7.9兆円繰り入れている。国と地方をあわせた借金は860兆円を超え、限界に近づいており、「埋蔵金」も底をつくから、2011年度以降は、こんな予算編成はおそらく不可能になろう。つまり、2010年度限りの予算編成で先のことは考えていない、といわれても仕方のないような予算なのである。

 これは結局、今年の参議院選挙に勝つための予算でしかない、ということを意味している。要するに、長期的にこの国をどうするかということよりも、目先の選挙のことしか考えていない、ということである。この点では、これまでの自民党中心の政権となんら変わりがない。「政権」は代わっても政治は相変わらずで、長期的展望は見いだせない。これでは、人々の将来への不安は消えず、希望を持つこともできない。だが、こうした政治を許してきているのは、ほかならぬ私たち自身である。私たち自身が、目先の利益につられ、それをもたらしてくれる政治家に票を入れるから、政治家たちは、自分の票になりそうな目先の利益誘導ばかりを考えるのである。政治を変えるためには、私たち自身が賢い選択、つまり、目先の利益ではなく長期的展望に立った選択をするしかない。

 その意味でいえば、今年の参議院選挙の焦点は、民主党が単独で過半数に達するかどうかではない。私たちが、目先の利益誘導しか言わないような政治家は拒否するという姿勢をはっきり示せるかどうかである。昨年の「政権交代」でわかったことは、政権を担う政党が代わっただけではなにも変わらない、ということである。私たち自身が変わることによってしか政治は変わらない。2010年が、みんなが希望を持てるような1年になるかどうかは、そこにかかっている。

 今年は、2007年に成立した「憲法改正」のための「国民投票法」が、いよいよ施行される(5月)。この間、「改憲」の議論は、金融危機による大不況の前に影を潜めた感があるが、「国民投票法」の施行を機に、またいろいろな「改憲」論が出てくることも予想される。「国民投票法」成立前に、自民党、民主党、そして経済界やマスコミ等、あれほどかしましく「憲法改正」が叫ばれていたのに、法律成立後はまったくといっていいほど話題にのぼらなかったのは、その「改憲」論が将来をきちんと見据えたものではなく、「ムード的」な議論でしかなかったことの証左である。「憲法改正」こそ、きちんとした長期的展望にたって議論されるべき問題であるが、「国民投票法」の施行ということで、またしても「ムード的」な「改憲」論がわき起こるのではないかと危惧される。ここでも、私たちには、目の前の「ムード」に流されることなく、長期的展望に立った判断が求められよう。

 さて、今年は、「韓国併合」100年、そして「日米新安保」50年の節目の年にもあたる。この二つは、戦前と戦後の日本の姿を象徴するものともいえる。歴史を振り返って、韓国、中国などアジア諸国との関係のあり方、そしてまたアメリカとの関係のあり方を考えてみるよい機会だと思う。アジア諸国との関係では、「未来志向の関係」などということが言われるが、それは、過去をなかったことにする、ということではない。「未来」は「過去」からつながっているものであるから、過去を無視した「未来志向」などはあり得ない。また、アメリカとの関係では、いつの間にか「日米同盟」という言葉があたりまえに使われるようになっているが、特定の国と「同盟」関係に立つということがどういうことを意味するのか、あらためて考え直してみる必要があると思う。


 

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