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浦部法穂の憲法時評

 

政党の名前


浦部法穂・法学館憲法研究所顧問
2010年4月22日

 「自民党の支持率急伸、一部世論調査ではトップに」。というのは、日本の話ではない。イギリスの自民党(自由民主党 Liberal Democrats)の話である。イギリスでは、長い間、保守党、労働党の2大政党が勢力を二分してきたが、ここに来て第3党の自由民主党が支持を伸ばし、5月6日に予定されている総選挙では、三つ巴で、どの党も過半数を獲得できない結果になるのではないかと予想されている。「二大政党制」の本家ともいえるイギリスで、それが崩れようとしているのは、興味深い。

 さて、このイギリス自由民主党は、昔の自由党と社会民主党が合併してできた政党であり(1988年)、社会福祉や環境などを重視する「中道左派」政党と位置づけられている。イラク戦争の際にはイギリスでいち早く反対を表明した政党でもあった。Liberal Democratsという党名は、そのイデオロギーや政策を表しているといえる。一方、日本の自民党は、Liberal Democratsという言葉とは、イメージが合わない。日本の自民党は「自由民主主義」(Liberal Democracy)を標榜する政党として「自由民主党」を名乗っているというわけではないからである。1955年に、当時の「自由党」と「民主党」が合併して結党されたことから、両方の名前をくっつけて「自由民主党」としただけのことである。名前のつけ方としては、「三井住友銀行」と同じようなものである。

 自民党に限らず、日本の政党は「名は体を表さない」ものが多い。民主党にしても、どこが「民主」なのか、よくわからない。日本の政党で、党名と主義・政策が一致しているのは、共産党と社民党くらいであろう。とくに、最近の「新党」は、訳のわからない名前のものばかりである。「みんなの党」とか「たちあがれ日本」とか、いったい、どういう考え方にもとづき何をしようとする政党なのか、党名からは皆目見当もつかない。主義・政策の中身ではなく、情緒的に共感を呼びそうな名前をつけている、ということなのであろう。つまりは、主義・政策で勝負する気はなく、ムード的に票を集められればいいと考えているのであろう。この点では、自民党や民主党が、タレントなど名の売れた候補者を擁立して票を集めようとするのも、同じである。

 そもそも、政党とは、政治や社会のあり方についての考え方を共通にする者が集まって、その共通の考え方にもとづいて国民のあいだのさまざまな利害を集約して政策を形成し、その政策の実現のために議会で活動し、政権を担当しあるいは政権の担当を目指す組織体をいう、とされている。だから、政党において重要なのは、その政党が、政治や社会のあり方についてどのような考え方に立っているのかであり、そのことが国民から見て容易にわかることである。そういう、政党の基本的立脚点がわからなければ、国民は、はたしてその政党に託していいのかどうか判断ができないこととなり、それでは、国民のあいだの利害を集約するという政党の機能も果たせないこととなろう。その意味で党名は重要であり、「体を表す」名前、つまり、その政党の基本的立脚点がすぐにわかるような名前であることが必要だといえよう。

 そういう観点からいうと、最近の「新党」は、どれも、政党としては「落第」といわざるをえないが、自民党や民主党も、基本的立脚点において考え方を共通にする者が集まって組織されているとはいえないから(それも「名は体を表さない」ものとなっている一因である)、やはり及第点をつけられるものではない。実際、自民党に所属するか民主党に所属するか、あるいはそこから出て「新党」を作るか、「政治家」たちのこれまでの行動は、政治や社会のあり方についての考え方にもとづいてではなく、もっぱら選挙のためでしかない。確固とした「哲学」をもっている本物の政治家がほとんどいない、ということである。これは、究極的には選ぶ側の私たちの責任であり、その結果も私たちに降りかかってくる。こんにちの政治の混迷も、その結果であると思う。テレビで名前が売れているからとか、かっこいいからとか、なんとなくよさそうだから、というようなことで選んでいるかぎり、本物の政治家も本物の政党も育ってこない。「本物」を見極める厳しい目を私たちがもつこと、それしか、この国の再生の道はないと思う。


 

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