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浦部法穂の憲法時評

 

結局、辺野古


浦部法穂・法学館憲法研究所顧問
2010年6月3日

 結局、辺野古であった。米軍普天間飛行場の移設問題に関し、5月28日に発表された日米共同声明は、辺野古への移設を明記した。昨年10月のこの欄で、私は、普天間移設問題は日米安保体制そのものの根本的見直しを迫る問題であり「これまでどおりの従属関係を続けていくということなら、辺野古移設しか途はないであろう」と書いたが(10月29日付け)、そのとおりになってしまった。「最低でも県外」とか「自然への冒とく」とか、威勢のいい言葉を吐きながら、鳩山政権も、結局、これまでどおりアメリカの言いなりになるということを、この共同声明で宣言したわけである。地元の合意も連立政権内での合意も得ることなく、アメリカとの合意だけで閣議決定に突き進んだのであるから、国内の声はいっさい切り捨ててでもアメリカの意向に従うという従属姿勢をはっきり見せつけたといえる。

 今回の共同声明では、辺野古への移設について、環境影響評価手続き及び建設が著しい遅滞なく完了できることを確保するような方法で設置・配置・建設する、とされており、要するに、2006年に日米で合意された現行案を前提に、あるとしても微修正にとどまるべきことが、ここで確認されたのである。そしてまた、沖縄駐留海兵隊の一部のグアム移転については、「代替の施設の完成に向けての日本政府による具体的な進展にかかっている」として、辺野古への移設が実現しなければ海兵隊のグアム移転もないぞという「脅し」さえ、書き込まれている。8ヶ月間、すったもんだのあげく、何のことはない、基本的に現行案でいくということを確認しただけである。鳩山首相がオバマ大統領に ”trust me” と言ったのは、どうやら、このことだったのであろう。

 昨年9月の連立政権政策合意では、「米軍再編や在日米軍基地のあり方についても見直し」、「日米地位協定の改定を提起」などのことが盛り込まれていた。普天間問題は、まさにこの文脈のなかで解決策を模索すべきものであった。つまり、普天間基地の代替施設をどこに作るかではなく、日本にアメリカ軍の基地がなぜ必要なのか、これほどまでに気前よく米軍を駐留させる必要性があるのか、といったことを根本的に問い直すなかで、普天間基地をどうするのかを考えるべきだったのである。それが前記政策合意の意味だったはずである。政策合意は、連立政権のいわば土台である。その土台の重要な一角が崩されたのであるから、この連立政権は崩壊せざるを得ない。社民党が連立離脱を決めたのは、当然の対応である。

 と、ここまで書いていたら、「鳩山首相辞任表明」のニュースが飛び込んできた。土台が崩された以上、連立が壊れるにとどまらず政権そのものが瓦解することとなったのも、これまた当然のことといえる。これで、4代にわたって、1年足らずで総理大臣が代わることになった。都合が悪くなれば党内で頭のすげ替えをしてその場をしのごうという、自民党と同じやり方である。ともあれ、こんなにコロコロ政治のトップが代わったのでは、まともな外交ができるはずもない。普天間問題は、結局、外交力の問題である。「がんばったけれど、アメリカの意向に逆らえず、結果としてこうなってしまいました。申し訳ありません」では、いかにも情けない。

 そもそも、1960年の現行日米安保条約は、10年たったら日米どちらからでも終了通告できるということになっている。相手の同意は必要ではなく、どちらかが通告すればその1年後に自動的に終了するのである(日米安保条約第10条)。つまり、1970年以降は、いつでも、日本の意思で安保条約を終了させることもできたのである。それを、50年もの間、何もせずに、「地位協定」の改定すら提起できずに、ずるずると続けていること自体、まともな外交姿勢とは言い難い。「日米同盟」とか「抑止力」という言葉の前に完全な思考停止に陥っているのである。それは、日本のマスコミもまた同じである。

 だが、普天間移設問題はこれで決着したわけではない。日米で合意したといっても、地元の強固な反対が貫かれれば、辺野古の代替施設建設も不可能になる。徳之島への訓練移転も容易ではないはずである。「関西で受け入れる」などという脳天気な知事も約1名いるが、そういう問題ではないということは、この8ヶ月間のすったもんだをつうじて大方の人は理解したはずである。思考停止に陥るのでなく、将来的な日米安保「終了」も視野に入れた在日米軍の段階的縮小の道筋を描くことで東アジアの緊張を緩和・解消する、という選択肢も含めて、この地域の平和と安定をいかにして構築していくかを、いまこそ真剣に考えるべきである。そのきっかけにすることができるなら、短命鳩山政権の「迷走」も、必ずしも無意味なものではなかったということになろう。

 

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