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浦部法穂の憲法時評

 

2014年を「戦前の始まりの年」にしないために


浦部法穂・法学館憲法研究所顧問
2014年1月9日

 謹賀新年
 今年も研究所と「憲法時評」をよろしくお願いします。

 安倍政権が発足して1年。太鼓持ちの学者、評論家、マスメディア、経済人などが「アベノミクス」などとはやし立て、実態も実感もないのに景気が回復していると人々に思い込ませてきた1年間であった。その効果あって、安倍氏は自信満々、「右翼の軍国主義者と呼びたければ呼べ」とまで言う余裕さえみせて、着々と「右翼の軍国主義者」の名に恥じない決断をしてきている。「日本版NSC」(国家安全保障会議)と「特定秘密保護法」で戦争準備のための情報操作と情報隠しに万全を期す。抑止力の強化を掲げる「国家安全保障戦略」(昨年12月17日に「国家安全保障会議」が決定)で軍事力の拡大強化を国家安全保障上の「目標」に設定する。さらには、このさき、武器禁輸原則の撤廃、「集団的自衛権」の行使容認が、続いていくこととなろう。そして、「国を守る」という名目でのこうした軍国主義的政策を円滑に進めていくために、教科書検定基準の改定など教育への支配介入を強め、国民に「愛国心」を植え付けていく政策も、同時に、より強化されることとなるであろう。こうした政治がこのまま着々と進められていくなら、2014年は、きっと、後世の歴史書において「戦前の始まりの年」(つまり、数年先の次の戦争への道程の始点となる年)として記録されることになるだろう。

 だが、このような右翼軍国主義的政治は、国際社会の警戒心を引き起こさずにはいない。昨年12月26日の安倍首相の靖国参拝は、中国や韓国の強い反発を招いただけでなく、ロシアやEUからも批判が起こり、ついにアメリカでさえ「失望した」という国務省談話を出すにいたった。アメリカにも「失望」されたことの意味はすごく大きいはずだが、日本国内ではこのことを深刻にとらえる議論がほとんど聞こえてこない。まったくもって不思議である。私は、安倍政権発足前、当時の野田首相が「破れかぶれ」の解散に打って出た直後の一昨年(2012年)11月22日付本欄で、もし自民党が勝ち安倍政権となったらこうなるだろうということで、次のように書いた。

 《当面の問題としては、まず、「領土」を守るとして強硬な措置を打ち出し、尖閣諸島をめぐる中国との対立が、さらに厳しくなるであろう。教科書検定基準の見直しでいわゆる「近隣諸国条項」を削除して、中国のみならず韓国その他アジア諸国の猛反発を招くであろう。そして、集団的自衛権の行使を認めるように「政府の憲法解釈を変更」することで、アジア諸国に強い警戒心を抱かせ、とくに中国との関係は抜き差しならぬ状況にまで悪化するであろう。とどめに、首相の靖国神社参拝である。こうして、日本は中国や韓国などとの対立をどんどん深め、「断交」に近いところまで関係を悪化させることになるだろう。安倍政権になって、いま安倍自民党の言っていることがそのまま実行されれば、こういう筋書きになることは十分予想される。それでも「日米同盟に揺るぎはないから大丈夫」と言う人がいるかもしれないが、東アジアに「一触即発」の対立関係をもたらすまでに右傾化する日本を、アメリカがどこまで「同盟国」として支えるであろうか。アメリカにも見放される可能性は、決してゼロではない。》(下線は追加)

 首相の靖国参拝は、いまの国際関係の中では極めつけの「悪手」で、アメリカでさえ怒るだろうということは、わかっていなければいけなかったことだと思う。私は、自分に先見の明があったと言いたいのではない。上記の文は、選挙中に安倍自民党が言ったことをそのまま実行すればこうなるぞ、と言いたかっただけで、まさかそこまで脳天気に突っ走るとは思わなかったし、そうさせてはならないということを言いたくてそう書いたのである。だから、安倍政権1年で、そこに書いたほぼその通りの状況になっていることに、むしろ恐ろしさを感じている。2014年が「戦前の始まりの年」になるかもしれない、というのも、安倍政治をこのまま突っ走らせたら、本当にそうなるかもしれない。「まさかそこまで…」が通用しないほどに、安倍首相は自信を深めてしまっているようにみえるから。安倍氏のこの自信は、経済がうまくいかなくなったり、アメリカにそっぽを向かれたり、ということによって打ち砕かれる可能性はある。そうなれば、安倍政権も命運尽きて、となることは考えられる。しかし、ここはそういう他力本願ではなく、国民の手で、安倍政権に引導を渡そうではないか。2014年を「戦前の始まりの年」にしないために。



 

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