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浦部法穂の憲法時評

 

名護市、南相馬市、そして東京都


浦部法穂・法学館憲法研究所顧問
2014年1月23日

 普天間飛行場の辺野古への移設について、これまで沖縄では、自民党沖縄県連を含め、県内移設反対ということで一致していた。しかし、昨年11月、自民党の石破幹事長が同党の沖縄県選出の国会議員5人に対し、移設計画を推進する党本部の方針に従うよう、離党勧告もちらつかせて強く迫り、5人は移設容認に転じた。そして、その2日後の11月27日、沖縄県連も総会の全会一致で、県外移設の公約を捨て辺野古への移設を容認することに方針転換した。そのうえ、やはりこれまで辺野古への移設反対を掲げてきた仲井真知事も、12月27日、政府が移設のために申請していた名護市辺野古沖の埋め立て申請を承認すると正式に表明した。安倍首相が口約束で言った、米軍基地内の環境調査や普天間飛行場の5年以内の運用停止、オスプレイの訓練の半分を県外で、などといった「負担軽減策」を、それが履行されるという保証も裏付けも何もないのに、「驚くべき立派な内容」とまでもちあげて・・・。これまでの仲井真知事の言動からは想像もつかない「驚くべき」豹変ぶりである。いったい、安倍首相との間に何があったのだろうか。懐柔か?脅しか?と、勘ぐりたくなってしまうほどである。

 しかし、自民党県連や知事の「裏切り」にもかかわらず、1月19日、この辺野古への移設問題が最大の争点となった名護市長選挙では、「断固反対」を訴えた稲嶺市長が再選を果たした。移設問題での対立軸が鮮明になるなかでの初めての選挙で、辺野古への移設は認めないという民意が明確に示されたのである。安倍自民党は、移設推進派の候補の勝利のために500億円の「振興基金」という札束をちらつかせたが、沖縄の人々の思いはお金でどうこうできるようなものではなかったのである。沖縄から突きつけられた安倍政権への"NO"である。

 こういう民意を、しかし、安倍政権は完全に無視しようとしている。この選挙からわずか2日後に、政府は、辺野古への移設に向け、代替基地の設計や環境調査などの受注業者を募る入札を公告した。3月末までに業者と契約し、約1年かけて調査・設計を行い、2015年春をめどに埋め立て工事に着手する方針だという。沖縄の人々の反対は力尽くでも押さえ込んで強行しようというのだろうか。そうなれば、政権も決して無傷ではいられないと思うのだが。

 名護市長選挙が行われた同じ日、1月19日には、もう一つ、福島県南相馬市の市長選挙が行われた。こちらでは、当然のことながら「脱原発」が最大の争点となったが、「フクシマ」以後現職首長として全国の脱原発運動を先導してきたといわれる桜井市長が、自民系候補を破り、やはり再選を果たした。福島の事故なんかなかったかのように原発再稼働に突っ走る安倍政権への、福島からの"NO"である。この民意もまた、安倍政権は無視を決め込むのだろう。

 沖縄も福島も、いずれもその問題の「現場」から、「当事者」から、政権に突きつけられた"NO"である。その意味はきわめて重い。「現場」や「当事者」こそが、その問題について、良いも悪いもすべてを、最もわかっているのだから。もちろん、民主主義にとって多数決がすべてではない。そのことは、私自身、折に触れて強調していることでもある。「現場」や「当事者」の意思であったとしても、その多数派の意思に従うことだけが民主主義ではない。だから、選挙の結果がこう出たのだからそれに従うべきだ、というだけの議論には、私は乗らない。しかし、辺野古への移設や原発再稼働には「大義」がない。沖縄に米軍基地を押しつけて県内で基地の「たらい回し」みたいなことをすることに、いったいどんな「大義」があろうか。あるいは、あれだけの事故を起こしながら、そしてその収束の見通しも立たないなかで、原発再稼働に突き進むことに、いったいどんな「大義」があろうか。どちらも、そこにあるのは、権力者および権力に群がり寄生する者たちの「目先の利益」だけではないのか。沖縄と福島から安倍政権に突きつけられた"NO"は、「現場」の「当事者」の多くがそれを見抜いた結果なのである。

 さて、つぎは東京の番である。東京からも安倍政権への"NO"を突きつけることができたなら、やりたい放題の安倍政権に国民の手で引導を渡すということも、実現できるかもしれない。東京の場合は、「元・首相」連合が「脱原発」を掲げて出てきたことで、少々ややこしいところもあるのだが・・・。



 

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