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浦部法穂の「憲法雑記帳」

 

第22回 公職の候補者となるための資格試験は考えられないか?


浦部法穂・法学館憲法研究所顧問
2018年3月22日

 「森友学園」への国有地売却問題で、財務省が決裁文書を改ざんし、同学園と関与のあった政治家(麻生財務相、安倍首相を含む)の名前や安倍首相夫人の名前が記載されていた部分とか、そういう「大物」が背後に控える「政治案件」として特例的な対応をしたことをうかがわせるような記述などをすべて削除していたことが明るみに出て、国会でも大問題となっている。安倍首相は、「私や妻が森友学園への土地売却に直接関わっていないことは、書き換え前の文書からも明らかだ」などと言って、自分は関係ないと強弁を続けているが、首相たる者が直接「安くしてやれ」などと担当役人に指示するなんてことは、そりゃあ確かにないだろう。役人の側は、そんな指示を直接受けなくても、背後に安倍氏や麻生氏などの有力政治家の影が見え、まして首相夫人が「名誉校長」として広告塔をつとめている事実があれば、学園側の要求をなんとしても受け入れようと知恵を絞るはずだ。そういうのを「忖度」というのである。その「忖度」が明らかになれば、首相などに迷惑がかかるというので、当時の佐川理財局長は「政治家の関与は一切ない」とか「文書は事案終了ということで破棄した」などという、嘘の答弁を国会で貫き通したのである。安倍首相は、直接関与したわけでないから自分には責任がない、というが、役人にそういう「忖度」をさせたのは、安倍氏や安倍夫人の名前があったからであり、「忖度」をさせたこと自体にすでに罪がある。

 それよりまえに、国有財産を不当に安い値段で売り渡したことは、国に重大な損害を与える背任行為であり、そしてまた、決裁文書の改ざんは、公文書偽造にもあたりうる重大な非違行為である。もし民間企業で同じようなことがあったら、最近あちこちでデータ偽造とか検査の手抜きとか、企業の不祥事が続いているが、そこでよく目にするように、社長あるいは副社長・担当役員以下数名が雁首をそろえ、記者会見の場で深々と頭を下げるであろう。ことが重大であれば、社長の辞任に発展することも稀ではない。組織の長には、それくらいの責任があるのだ。そういう意味で言っても、今回のケースにおいて、行政の長たる安倍首相の責任は免れないし、ことの重大性に鑑みれば、みずから辞任するのがその責任の取り方だといえる。「自分が直接関わったわけではないから責任がない」などと言ってはばからないような人間に、「長」としての資格はない。また、直接の「担当副社長」である麻生財務相は、「最終責任者は当時の理財局長の佐川だ」と言って、頭を下げるどころか、きわめて尊大な態度・もの言いで平然としている。部下一人に責任をなすりつけて保身を図ろうとする、なんとも情けない人間が大きな顔をしているとは・・・。佐川氏も、決裁文書の書き換えまでして必死に安倍政権を守ろうとしたのに、そしてその論功で国税庁長官にまで取り立ててもらえたのに、結局一人で詰め腹を切らされることになって、一体どんな心境でいるのだろうか。

 ことはしかし、「森友問題」だけではない。防衛省の「日報」隠蔽、「働き方改革」をめぐる厚労省のデータ偽装、そして文科省は、安倍首相にとっていまや「敵性人物」となった前川・前文部科学事務次官を講師として招いた1公立中学校のその授業について、前川氏を招いた理由や授業の内容を「具体的かつ詳細に」知らせるよう市教委に指示して、特定の授業内容に介入するという前代未聞の暴挙に出、これには自民党の2議員が関与していたことも明らかになっている。というように、安倍政権になってから、これ以外にもいくつもあったが多すぎて思い出せないくらい、「まさかこんなことが」と思われるような異常なことが、それこそ日常茶飯事的に起きている。政治の質が、どんどんどんどん劣化しているのである。

 国の三権を担い、その権力を実際に行使する人々のうち、司法権の担い手たる裁判官や検察官は、原則、司法試験に合格していなければならない。また、行政事務を担当する国家公務員も、国家公務員試験に合格していなければならない。しかし、立法の担い手だけは、何の試験もなく、誰にでも資格がある。そして、内閣総理大臣やその他の大臣(のほとんど)は国会議員のなかから選出されるから、やはり何の試験もない。私は、試験がすべてとは思わないし、いまの司法試験や公務員試験が本当にその能力・資質・適性のある人物を選抜するためのものとなっているか、と問われれば、そうだと言う自信もない。だが、このところのむちゃくちゃな政治、あきれるような政治家の言動、等々、政治の劣化がますます深刻化している現状を見るとき、国会議員になるにも一定の資格試験を課した方がいいのではないかと、冗談ぬきに思うのである。国会議員だけでなく、地方議会議員や自治体の首長も含め、公職の候補者となるための資格試験というものを考えられないだろうか。内容は、憲法と一般教養の2科目くらいでいい。マークシート方式で構わない。人事院の管轄下でできないことはなかろう。合格点を設けなくても受験を義務づけるだけでいい。そのかわり、立候補した際には、その試験の成績を選挙公報に記載する。また、資格の効果は10年とし、最後の受験から10年を経過したらもう一度受験しないかぎり公職の候補者となる資格を失う。というようなことをざっと考えてみたが、いかがであろう。試験を受けなければ立候補できないということになれば、少なくともその試験に向けて勉強はするだろう。金があるとか、親から地盤を受け継いだとか、テレビ等で名が売れたとか、そんなことだけで何の勉強もしないで議員になっている連中が多すぎるから、こんな政治がまかり通っているのではないのか。だったら、せめて、憲法尊重擁護義務を負う議員を目指す者として憲法の基本的なことと、公職者として身につけるべき最低限の教養と品格にかかわることくらいは、勉強してから議員になってもらいたいものだと思うのである。そして、その試験の成績が選挙公報で公にされれば、有権者の選択にも大いに役立つはずである。



 

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