憲法改正を考える
各政党の憲法改正に関する考え
2022年6月6日 更新
2022年5月3日、日本国憲法は施行75年の節目を迎えました。日本国憲法が誕生して以来、憲法改正を党是とする自由民主党が一時期を除き与党の座に就いていたにもかかわらず、一度も改正されることはありませんでした。ところが、2007年には憲法改正国民投票法が成立し、2011年には衆参両院に憲法審査会が設置され、特に2012年以降の第二次安倍政権下においては、96条の改正論に始まり、緊急事態条項の創設、9条への自衛隊明記など焦点を目まぐるしく変えながらも、憲法改正が熱心に唱えられてきました。
安倍政権下での改憲は実現しませんでしたが、2021年の衆議院議員選挙において憲法改正の必要性を訴える勢力が3分の2の議席を獲得し、憲法改正の発議が現実味を帯びたことで、改憲論議は活発化しています。また、ロシアによるウクライナ侵攻を受け、日本の平和主義のあり方を問い直す議論が盛んに主張されています。
そこで、憲法改正を考えるにあたっての基本的な視点、憲法改正に関する論稿やニュースなどの情報を発信していきます。単に「護憲」か「改憲」かではなく、憲法改正について冷静に、じっくりと考えるための情報を提供したいと思います。
◆自由民主党
結党以来、「憲法の自主的改正」を党の使命としている自民党は、これまで様々な切り口で憲法改正の必要性を主張してきました。
現在は優先的に検討すべき4項目として①自衛隊の明記②緊急事態対応③合区解消・地方公共団体④教育充実に関する憲法改正の必要性を主張しています。
憲法改正実現本部
●(解説版)「日本国憲法の改正実現に向けて」 2022年5月
●(資料編)「日本国憲法の改正実現に向けて」 2022年5月
●憲法改正に関する議論の状況について(条文イメージ・たたき台素案) 2018年3月
●憲法改正ビラ 2019年2月
●マンガでよく分かる ~憲法のおはなし~ 自衛隊明記ってなぁに?2019年6月
●幸せのカタチ 私たちの憲法 2020年1月
●日本国憲法改正草案 2012年4月
●日本国憲法改正草案Q&A 2013年10月
●漫画政策パンフレット 2015年4月
◆日本維新の会
70年前に施行されて以来改正されていない現行憲法を、時代の変化に合わせ、具体的問題解決のために改正するとして、2016年に、教育無償化、統治機構改革、憲法裁判所の設置という3点に絞り込んだ憲法改正原案をまとめています。憲法改正の発議が現実的となった今日、各党に具体的改正項目の提案を促し、憲法審査会をリードしていきたいと憲法改正の主張を強めています。
憲法改正原案PDF
政策提言 維新八策2022 より憲法改正に関する部分を抜粋 2022年6月
◆公明党
現行憲法の国民主権、基本的人権の尊重、恒久平和主義の3つの原理を高く評価し、今の日本をつくった素晴らしい憲法を守りながら、時代に合うように加憲していくという立場です。環境、プライバシー、地方自治などの新しい理念や権利を憲法に加える必要があると主張していますが、どの条文をどう変えるべきか、また、改正の優先順位をどうするかという具体的な提案はされていません。9条については、戦争の永久放棄、平和主義の定めは守りつつ、自衛隊の存在や国際貢献について議論していく必要があるとしています。
公明党の憲法改正
◆国民民主党
現行憲法の基本原理は堅持。「個人の尊厳(尊重)」を基本的価値とする近代立憲主義の根幹については、時代状況に対応しつつ、これを深化させていかなければならないとする立場です。
憲法改正に向けた論点整理では、法律で対応可能な事項も含め、現在指摘されている課題を広く取り上げていますが、平和主義については、9条2項の改正案と2項をそのままに3項を加憲する案を提示。また、緊急事態条項についても、検討を進める際の論点を整理しています。合区解消も都道府県単位で参議院議員を選出できる制度設計を含め検討するとされています。
「国民民主党憲法調査会 憲法改正に向けた論点整理
新時代の人権保障と統治機構の再構築を通じて 憲法の規範力を高めるために」 2020年12月
◆立憲民主党
憲法順守義務のある国会の側が改憲ありきで憲法審査会を開き、議論を進めようとしていることに懸念を示し、立憲主義が蔑ろにされている現状に対して「立憲主義を守り回復させる」と主張しています。憲法を一切改定しないという立場ではなく、立憲主義に基づき権力を制約し、国民の権利の拡大に寄与するとの観点から、憲法に限らず、関連法も含め、国民にとって真に必要な改定があるならば、積極的に議論、検討するという立場をとっています。
憲法に関する考え方~立憲的憲法論議~ 2018年7月
◆日本共産党
現在は、現行憲法の前文をふくむ全条項をまもり、とくに平和的民主的諸条項の完全実施をめざす立場です。日本国憲法は、憲法9条という世界で最もすすんだ恒久平和主義の条項をもち、30条にわたるきわめて豊かで先駆的な人権規定が盛り込まれている。変えるべきは憲法でなく、憲法を蔑ろにした政治であると主張しています。
天皇制については、民主主義および人間の平等の原則と両立するものではないので、その存廃は、将来、情勢が熟したときに、国民の総意によって解決されるべきとしています。
日本共産党 綱領 より憲法改正に関する部分を抜粋 2020年1月改定
◆社会民主党
「平和・自由・平等・共生」を理念に掲げ、その具体化に向けた不断の改革運動を社会民主主義と位置づけ、憲法の理念が実現された社会をめざします。
安全保障のあり方としては、安保法制、特定秘密保護法、テロ等準備罪を廃止し、唯一の戦争被爆国として核兵器禁止条約に批准・署名。北東アジアの近隣諸国との対話外交を盛んに行い、非核平和地帯を創出する。辺野古新基地建設を止め、日本からの米軍撤退、米軍基地の土地返還のシナリオをつくる。不平等な現在の日米地位協定を全面改定し、対等・平等な日米関係へと改善します。所謂「思いやり予算」は廃止し、アメリカからの武器の爆買いも中止。その予算を福祉や教育に振り向け、四半世紀にわたる新自由主義改革によって疲弊した日本社会を再生させる。
社会民主党 理念
◆れいわ新選組
今出されている自民党の改憲草案には反対である。
憲法を「一言一句いじってはいけない」わけではない。憲法改正が必要なものを憲法の解釈をねじ曲げて、無理矢理立法化することを防ぐための改憲は必要かもしれない。もちろん憲法改正の議論はしても良いが、これまで与党は議論を始めることで、合意が得られなくても力ずくで法案を成立させてきたので、憲法改正でも数の力で押し切られる危険があるのではないかと危惧している。
憲法についてのまとめ(山本太郎:全国比例・れいわ新選組2019年記者会見)